こんな濃密でリアルな物語を1万字で描けるものなのですね。
みーちゃんは殺人鬼です。このタイトル。色んな意味が込められています。全てにしっかり意味があります。文字だけで判断をしてはいけません。
悲しい物語です。あらすじには、みーちゃんはおとなしい女の子であると語られています、その通りです。本当にその通りです。
丁寧語調の地文というのが秀逸で、ある種の絵本のような柔らかさで読者を捉え、ミステリー要素で捕まえ、ラストのカタルシスで読者の心を食い尽くす。そんなパワーのある、また説得力のあるストーリーでした。
☆が少なすぎると思いました。もっと読まれて良い。皆に読んで欲しい。だからレビューします。
そして、他のレビューも拝見して「確かに!」となりました。皆さん分かってらっしゃる。
私も、みーちゃんもみーちゃんのお父さんお母さんも大好きです。願わくば、彼らの道の先に心の平安がありますように。
とてつもない作品を読んでしまいました。
みーちゃんは、いつも我慢をしています。それは小さなころからずっとです。みーちゃんには日々、たくさんの不条理が降りかかります。みーちゃんはそのたびに「殺す」のです。彼女がどうして殺人鬼になってしまったのか。みーちゃんはみーちゃん自身に、そして、読者であるあなた自身に語りかける。この一万字超は、彼女の記憶と記録の物語です。
ネタバレさせたい気持ちをぐっとおさえ、なるべくぼかす形でこの物語の凄い点についてお話したいと思います。
まず、みーちゃんが幼いころから25歳である今に至るまで、どんな環境で生きてきたかを必要最小限の言葉で描いているところが凄いです。人間の人生ですからね、25年といってもそれはそれは長いもの。しかしそのなかでも特にみーちゃんの感性や価値観に影響を与えたところだけを完璧に説明してくれる。中編で人生を述べるのというのはこれ、私が書き手だからわかるのですが至難の業です。ドキュメンタリー番組よりも、さらに高い編集力を感じることができました。
次に、それぞれのステージの事件がショッキングすぎる。まったく衒うことなく事件の詳細が描かれているのです。読む方は息を呑みます。ここまで人間のいやらしさを描くことができるのか、と私は驚きました。でもそれって、ただエグいことばかり書いても伝わりません。本作がすごいのは、ショッキングなことが起こったときの、みーちゃんの心情を的確に表現していることです。特に、みーちゃんが目にする「死体の山」は見事すぎる比喩でした。いや、じっさいにみーちゃんは死体の山を見ていたのでしょう。彼女にとって、それはまごうことない事実だったのでしょう。みーちゃんの見た地獄は、読者にもよく伝わるはずです。
また、ここでの心情表現が凄い。
「イヤだ」「辛い」「悲しい」……ショッキングなことが起こったとき、たいていはこういうふうに感じるのではありませんか? リアルでも、それから小説の中でも。しかしながらですね、みーちゃんは自分の置かれている状況を淡々と語るのです。これが、強いリアリティを生みだしています。なるほど、みーちゃんだったらこう感じるだろうと。納得するのです。
あと、本作を広義のミステリーとして捉えた場合、タイトルにある「殺人鬼」という要素が秀逸です。ここ……なるべくネタばらししたくなかったのですが、みーちゃんは「○○をしているのか、どうなのか」、これがですね、最後までわからないのですよ。私は本作を読んだ方がいらっしゃれば語り合いたい。「○○しているんですかね?」と。これをあえてわからない形にしているところが筆者の実力だと思います。これを明らかにしていないから、すごく怖いんです。そして、みーちゃんの過去と現在がいかに過酷であるかということと、未来がいかに薄氷であるかということがよく伝わってくるんです。ああ、そうか、ここをぼかせば本作は立体的になるのか。書き手として感嘆しないではいられませんでした。本作のテーマ提示とその深さについても、凄いものがありました。ほんとにね、深く考えさせられます。
最後に、プラス方向の部分についてもフォーカスさせてください。とてもショッキングな話が続くのですが、ぼくは「お母さん」が好きだったな。ラスト付近のシーンでは目の奥が熱くなりました。みーちゃんはお母さんのことが大好きだね。ぼくも、みーちゃんのお母さんのことが好きだよ。
このお話。怖いけれど、やっぱり舞子さんらしい「人間ドラマ」なんです。