シャングリラ紀行

作者 稀山 美波

107

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★★★ Excellent!!!

海を望む崖を舞台に、危うくもしっとりと落ち着いたストーリーが静かに進行していきます。生死というテーマはやもすると個人的主観が入り込み、押しつけがましくなってしまうと思うのですが、この作品は独特な死生観がそうはさせない。

「シャングリラ」という響きがもう好き。夜の月は天蓋に空いた穴、これも好き。彼女の意地悪くも艶やかな微笑み、もう最高。

読了したのがバスの中で泣くわけにいかず、わたしはひたすら鼻をかんでいました。ティッシュ持っててよかったなあ、と心底思った。

叶うことなら記憶を消して、夜に贅沢ふかふかソファで飲み物片手に読みたい。そんな作品です。

★★★ Excellent!!!

生き場所を求める『僕』と、死に場所を求める彼女。
彼女からシャングリラという言葉を聞いた『僕』は、次第に彼女の語るシャングリラに引き込まれていきます。
月や星は天蓋に空いた穴。毎夜そんな話を交わす二人は、もうシャングリラに至っていたのではないか……そう感じました。

★★★ Excellent!!!

理想郷、シャングリラ。

この世界を覆う天蓋の向こうにそれはある。ぽかりと、月という穴が開いた天蓋、その向こうから、先にたどり着いた者はこちらを見ている。

こういうものを純文学というのでしょうか。華美な物は取り払って、けれどどこまでも澄んだ水のように美しい物語です。

シャングリラを目指す彼女、その彼女の手をとった彼。

結末には、静かに涙を流しました。月を見るたびに、ふとその向こうを思いたくなります。

★★★ Excellent!!!

いい文学作品ですね。

比喩表現はそんなに出てこないです。
硬派?なんでしょうか。

その変わり、出てくるときのインパクトが凄いですね。

読んでいて意味不明になるところもほぼなく。
意味不明なところは少し考えれば簡単に答えが出てくる「仕掛け」としての装置。
綺麗にまとまっています。

みんな、文学作品は良いぞ。

★★★ Excellent!!!

ただただ、美しいお話でした。
生きる場所を探す男と、死ぬ場所を探す女。
彼女は、どこから自分の死ぬ場所はここだ、と思っていたのだろう。
少しいじわるな顔で笑うのは、死に場所を探しているゆえだろうか。

いずれ、誰もが辿り着くシャングリラ。そこで、天蓋に穴を開けて見ている、先に旅立った者たち。
だけど、彼らとわたしたちは、一緒にシャングリラを目指していたんだ。ただ、辿り着くのが早いか、遅いかだけ。

わたしたちはいつも、幻想の国から見守られている。
彼らとシャングリラでまた再会する時まで、しっかり人生を歩こうと思えた一編でした。

★★★ Excellent!!!

夜の世界に広がる、月と星の光。そして、シャングリラ。
この作品が纏う、不思議な切なさに胸がずっと締め付けられました。

生き場所を求めている僕と死に場所を求めている彼女。
この2人の会話劇です。世界を覆っている天蓋の穴の、月を背景にしながら。

彼女の考え方が、幻想的で素敵です。本文から少し抜き出すと、
「この世界は、暗くて硬い、大きな壁に覆われているのよ。天を覆う大きな蓋、まさに天蓋ね」
「天蓋の外にある、シャングリラ。そこの光を感じることのできる、唯一の穴よ」
と言う感じでしょうか。
世界とはなんなのか。夜とはなんなのか。月とはなんなのか。
彼女の解釈の仕方は新しく、そして自然と体に馴染みます。

シャングリラ、と言う響きが私は好きです。
シャングリラ、シャングリラ。
聞きなれない言葉ですが、作品を読むとすぐに覚えてしまいます。そして、クライマックスまで、この言葉は欠かせません。

切なさと儚さと淡い感じ。でも、暗い中で見えるか細いけど確かに見える光。
あなたもシャングリラを見てみませんか?

★★★ Excellent!!!

世界は天蓋に覆われていて、月はそこに開いた穴。謎めいた女は、断崖の上で男に語る。夜の邂逅は彼に力を与え、話の続きを望むが……。

きらめく星々のような死生観、静かにして熱狂を秘めた女の語りに引き込まれました。そして私も、彼らの夜が長からんことを祈ってしまいました。
星空に救いを、愛をみたくなる物語です。

★★★ Excellent!!!

真夜中の崖に二人立ち、満月の光を浴びる彼女は意地悪な笑みを浮かべてくっくっと笑いシャングリラへの憧れを嘯く。

「もし行けるのなら、私はシャングリラに行きたいわ」

それは生き場所を求める男と死に場所を求める女の物語。

かくして彼女はシャングリラに旅立ち、男は再び満月の光射すあの崖に立つ……


彼女の語るシャングリラへの憧れが本当に美しく幻想的で、確かに彼女はシャングリラに旅立ったんだと確信できる説得力があり、その最期にただただ胸が締め付けられました。
意地悪な笑みの裏に隠した彼女の本当の願いに主人公が気づいて新たな生き場所に旅立つラストも素晴らしいです。

★★★ Excellent!!!

生き場所を求める〈僕〉と、死に場所を探す〈彼女〉。そんな二人が出逢い、見出だした結論とは――。
何かの本で「名作とされる小説は必ず死か愛について書かれてる」なんて文章を読んだことがあるけど、本作では両方描かれています。

ストーリーと文章共に美しい名短編。