異質で綺麗で儚い響き、シャングリラはいつも貴方と共に。

海を望む崖を舞台に、危うくもしっとりと落ち着いたストーリーが静かに進行していきます。生死というテーマはやもすると個人的主観が入り込み、押しつけがましくなってしまうと思うのですが、この作品は独特な死生観がそうはさせない。

「シャングリラ」という響きがもう好き。夜の月は天蓋に空いた穴、これも好き。彼女の意地悪くも艶やかな微笑み、もう最高。

読了したのがバスの中で泣くわけにいかず、わたしはひたすら鼻をかんでいました。ティッシュ持っててよかったなあ、と心底思った。

叶うことなら記憶を消して、夜に贅沢ふかふかソファで飲み物片手に読みたい。そんな作品です。

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