色を文章で表現する。
書き手であればいつかは挑戦したいものの一つだ。
(もう一つ挙げるとすれば「音」を表現することか)
僕たちは色を知っている。
赤は赤だと知っている。
白は白だと知っている。
では、生まれた時から盲目の少女の見る色は?
さて、ここにメアリーの部屋という思考実験がある。
生まれた時から白黒の部屋でしか過ごしたことのない少女がいる。
その少女が初めて外の世界に出た時に、彼女の目に世界はどう映るのかという思考実験である。
本作の主人公である少女も先天的に盲目である。
しかし、とある男との出会いによって、彼女の中に色が生まれる。
果たしてその色とはどんな色なのか。
そして色に触れた少女はどういう決断を下すのか。
瑞々しいこの物語に触れて、共にその色を感じて見てください。
おすすめですよ。
「盲目の主人公」という、書き手にとってハードルの高すぎる設定を物ともせぬその筆力に、まず脱帽。
主人公の目が見えないからこそ見えている世界と、肌と心で感じる色の描写が、ひたすらに綺麗です。透明な水色が踊る、光の乱反射を感じさせるような曖昧な景色が目に浮かびます。
美しい作品に久々に出会えた、その美しさにわたしの語彙力がどっかに旅に出た。行ったその場所が楽しいのかそれとも道に迷ったのか、奴ぁなかなか帰ってこない。いい加減帰ってきてほしいのだけど、どうしたものか。
ですので、書き手の皆さまはご自分の作業をひと通り終わらせてから読むことを推奨します。あなたの言葉に足が生えてスキップしながら何処かに行ってしまうでしょうから。