行こう、僕らのシャングリラへ。
- ★★★ Excellent!!!
夜の世界に広がる、月と星の光。そして、シャングリラ。
この作品が纏う、不思議な切なさに胸がずっと締め付けられました。
生き場所を求めている僕と死に場所を求めている彼女。
この2人の会話劇です。世界を覆っている天蓋の穴の、月を背景にしながら。
彼女の考え方が、幻想的で素敵です。本文から少し抜き出すと、
「この世界は、暗くて硬い、大きな壁に覆われているのよ。天を覆う大きな蓋、まさに天蓋ね」
「天蓋の外にある、シャングリラ。そこの光を感じることのできる、唯一の穴よ」
と言う感じでしょうか。
世界とはなんなのか。夜とはなんなのか。月とはなんなのか。
彼女の解釈の仕方は新しく、そして自然と体に馴染みます。
シャングリラ、と言う響きが私は好きです。
シャングリラ、シャングリラ。
聞きなれない言葉ですが、作品を読むとすぐに覚えてしまいます。そして、クライマックスまで、この言葉は欠かせません。
切なさと儚さと淡い感じ。でも、暗い中で見えるか細いけど確かに見える光。
あなたもシャングリラを見てみませんか?