魔女の隠れ里

作者 夏野けい

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★★★ Excellent!!!

水汲みの帰りに、ティナが拾ってきたのは、ひとつの異物。魔女じゃないもの。つまりは、人間の男だった。彼は怪我を負っていた。
その男とふたりきりになった魔女のアマリアは、男と話をする。

という、たったそれだけの物語です。文字数は1000文字弱。

それなのに、作品の世界と雰囲気ができあがっています。
作者の筆力が感じられます。


世界観の設定は、あるようでないような。ないようであるような。そんな不思議な心地になります。
地の文では説明をせず、あくまで会話で世界観を見せるだけです。
アマリアと男の、それぞれの主観によって、世界は成り立っています。ふたりのフィルターを通して、世界が見えます。
なかなかできることではありません。脱帽です。

ゆっくりと漂うような作品の雰囲気は、その世界観を魅せます。
どこか安心できて、どこかはらはらしてしまう。そんな危うい雰囲気なのに、それを美しいと感じてしまう。綺麗だと思ってしまう。
しっかりとした地の文と主張し合う会話。その絶妙なバランスが素晴らしいと思います。

魔女の隠れ里。
それは間違いなく、ここに描かれているものなんだと思います。
幻想的で、現実的で、ぐらぐらしていて、しっかりしていて。


魔女たちの行く末が幸あらんことを願いたくなる、そんな作品です。

★★★ Excellent!!!

短い中に魔女とそれを追う者の姿を雰囲気を込めて描いてあって堪能しました。どちらにとってもおそらくなんの益もない戦いとわかっていても避けられない、というやりきれなさがにじみ出ていて素敵です。
このお話はこれで完結していますが、この先を読みたくなってしまいました。