愛を知り、愛を深め、愛に生きる。そこにあるのは、桃源郷か、地獄か。

子をなさぬまま、夫を亡くした桃。世継ぎのために、養子をとることになるが、それは自分より年上の陵駕という青年だった……。


序盤から、世界観の構築の仕方と、登場人物の関係性に驚かされ、そのまま世界に引きずり込まれてしまいます。
貴族社会の美しさと儚さ、そして残酷さ。全ての良さがぎゅっと濃縮されています。

最初は桃の持ち前の明るさや陵駕の少し意地悪な性格、桃の妹・桜のけなげさなど、主要人物の良さが存分に描かれ、なんとなく和みます。
息苦しい貴族社会の中でも、生きていける。楽しいことはある。彼女たちが今までどうやって生きてきたのか、それがわかります。

でも、それは作者の罠でした。
読者を苦しめるための罠だったのです。

いいですか、序盤で騙されてはだめですよ。
中盤以降、どんどん苦しい展開になっていきます。
まだいじめたりないのか、と言いたくなるくらいに、登場人物たちは追い詰められていきます。
鬼畜、鬼畜だよ……!、と何回叫びたくなったかわかりません。キャラに対する愛が歪んでいます(笑)

ただ、苦しみの中で、決断していく、そして生きていこうとする彼女たちは、とても人間味があって、美しかったです。
揺るがない信念がある。どうしてもそれをつかみ取りたい。その熱量にますます胸が痛み、頑張れ、と応援したくなります。


そんな彼女たちの、ひとつの結末を見届けてみませんか。
きっとラストは胸が痛くなり、そして熱くなります。

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