これは、『永遠が確約された世界』で生きる、少年と少女と魔女と神の物語です。
人は皆、生まれ変われる、つまり、記憶を引き継いだまま、転生できる世界。
故に、『死ぬこと』は、たいして恐ろしいものでもなんでもなく、ただ生まれ変われる手段と成り果てている。
この設定が上手いと思いました。
というか、ひえええ、と声を漏らしたくなります。
確かに、自分が自分として生まれ変わることができるならば、死ぬことは恐ろしいことでもなんでもなくなります。
むしろ、今の人生が上手くいっていないならば、進んで死のうと思います。だって、逃げる手段が、やり直せる手段があるんだから。
それが、『死ぬこと』。
作中のテオという少年も、人生が上手くいっていなくて、冒頭、自殺しようとします。
そんな少年が自殺しようとしていたときに出会うのが、アイラという少女。
彼女は、死のうとしている少年に、告げます。
「あんたの命は、尊いもののはずでしょ!?」
私たちが、当たり前のように感じていること。この作品を読んで、思うこと。
それを、少女が代弁してくれます。
だけど、よく考えて欲しいのは、彼女は死生観が狂った世界で生きている人間です。
この世界では、テオの考え方が当たり前。正しいはずです。
なのにどうして彼女は、「命は尊いもの」と言えるのか?
その疑問の答えは、想像以上に大きいものなのです。
あまり、言うとネタバレになってしまいますが、この死生観が狂った世界になってしまった原因には直結しているのです。
世界観設定、物語の構成、表現方法。
これら全てが、素晴らしいと思います。
互いに互いを支え合い、影響しあって、ひとつの物語を創り上げています。
ボーイミーツガールから始まる世界の物語。
生きることの意味。
永遠の世界に囚われている、彼らの物語を読んでみませんか?