自由に人を愛せない。貴族の世界に渦巻く、それぞれの想い。

舞台は平安、登場人物は貴族。
高校あたりで古典をやっていれば、おそらくこれだけで中々ドロドロした話を想像されるでしょう。

本作も貴族特有の政略や、それ故の叶わぬ恋というのがメインとなっております。
そしてそれが、現代の私達にも分かりやすく描かれているのです。

本作を読むのに古典の知識はほとんど必要ありません。
多少見慣れない言葉があっても、ルビと共に「あ、あれのことね」と簡単に思い浮かぶような描写をしてくれています。
しかも全体を通して美しい文章で描かれており、セルフレイティングは3つとも堂々の有りですが、「なにこれ美しい……」と思わされる程です。

ここまで文章のことを言いましたが、個人的なおすすめはドロドロした舞台設定故の、ゴリゴリ心を削ってくる精神攻撃でございます。
展開を予想して心の準備をしていても、それでもゴリゴリゴリゴリ精神が削られます。
でもご安心ください。これは嫌なやつではなくて、「もうやめてあげてぇ……!」と登場人物についつい感情移入してしまう方のやつです。

そして読んでいる途中にそう感じるからこその読後感。
もし辛い展開に目を背けたくなっても、是非最後まで読んでください。

登場人物達のこれからの人生が、きっと良いものでありますように。
自然とそう思わせてくれる作品です。

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