正に「歴史・時代・伝奇を愛する人たち」へ

 歴史・時代・伝奇というジャンルの奥深さを感じられる物語です。

「桜の宮」と名付けられた架空の宮廷を舞台にしている事、異世界ファンタジーとも取れるのですが、主眼としているのは貴族の生活と愛という歴史モノの定番である宮廷ロマンがあり、魔という存在は異世界ファンタジーのモンスターではなく、伝奇だと感じさせられました。

 物語の登場人物は皆、宮廷人ですから、それぞれに一般人が持つ感覚とは解離している部分が多々ありますが、それを補って余りある貴人の矜恃、嗜好というものが表現されていて、愚かかも知れないけれど、決して間違いとは言い切れない人の業とでもいうべきものを感じられます。

 兎角、この歴史・時代・伝奇というカテゴリーには、いずれかの要素が含まれているだけのものが散見される中、あらゆる要素を取り入れ、「このカテゴリーしかない」と感じさせられるのは、この物語の特筆すべきものです。

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