容姿よりも生き方とプライドを持つ人をイケメンだと思える人たちへ

 主人公を始め、仇役や脇役に至るまで、プライドという強い個性を持った登場人物に彩られた物語です。

 容姿こそ明言されていませんが、彼らの言動の端々に感じられる行動理念は、まさしくイケメンといっていい格好良さを秘めています。悪魔、魔王というファンタジックな存在を登場させていますが、彼らはそういった単語から受けるイメージからは遠くかけ離れていて、食事や趣味のシーンを大切に書かれているからこそ良い意味で人間くさく、そして物語の世界に生きるひとり一人だと感じさせられる個性があります。

 戦うイケメンコンテストに参加されている物語ですから当然、バトルシーンもあるのですが、思わず目を引かれるのはバトルはバトルでもレースがある所でした。
 作者の知識の深さ、自動車やバイクに対する興味の広さをこれでもとぶつけてくるバトルシーンは圧巻の一言です。

 キャットコピーにある通り、契約を果たすため主人公の魔王はプライベートを無視されて召喚され、それはコミカルに書かれていますが、どれだけ振り回されても契約者である婦警をフォローする魔王は、バディものとしても秀逸。

 対する仇役の悪魔は、契約者の非道がこめでもかと描写され、さながらブラック企業に勤める底辺のようにも思えますが、それでも職務放棄しない事の理由が明かされる後半、二人の対決は悲壮感溢れるものになっています。

 クレバー、スノッブ、クール……そういう見方をするならば、主役の魔王も仇役の悪魔も、また管轄外の事件に首を突っ込みたがる婦警も、事件の被害者、当事者達も、それらの単語とは無縁の存在です。もっと頭のいい方法はいくらでもあるし、バカが殴り合ってる、殺し合っているだけに見えるかも知れません。

 しかし作者さんがいいたい事は、強いプライドを持ち、一意専心と突き進む事に、格好良さ、また贅沢さがあるのだと言う事ではないか? と感じさせられます。

 また作者さんは、全ての創作で「男なんてどうしようもないバカで、だけど愛さずにいられない存在だ」と書きたいと仰ってました。

 そんな作者の渾身の一作、まだまだ広がりを見せる世界観を、是非、皆様も楽しまれてはいかがでしょうか?

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