第101話 メリーゴーラウンド
……私は…愛される資格などありません…あなた様から精霊としての生命を頂戴して…千の夜を超えてもあの方の事を想ってきたのに…
東方より来た人間の…しかも奥方のいる男性を愛してしまうだなんて…
……この国は一人の男性を皆が好きになっても良かったのでは無かったのか?
……勿論、そうなのですが…私は私自身の気持ちの向かう方向に納得が行かないのです…
マザー・ハーロットはジーニャを見つめる…
まるで揺り籠の中を覗く母親のような優しい瞳で…
……ジーナよ…
……は、はい…
……そなた…
……人間界にも私達の国にもある子供の遊具ですよね…大人も乗ったりしますが…
……うむ…ジーナ…生命というのはな、あれと同じよ…
木馬に乗って一回転するまでに上がったり下がったり…一度の人生で良い事があってもまた下がり、
悪い事があっても木馬はまた上がっていく…
そして何回もそれを繰り返して生命は強く
そなたが誰を気にしていたのか…わらわには知る由も無いが…木馬に一緒に乗りたいと思う心許し合える者とは輪廻の中でまた巡り逢える筈じゃ…
そなたの想い程…強く願う相手ならなおさらな…
……輪廻…また巡り逢える…ま、まさか…
……わらわにはそれしか言う事を許されておらん。
わらわも生命を持つ者…神では無い…
ただ…あまりにもそなたがバビロナを想う高貴な気持ちにわらわの口が滑ってしもうたわ…許せよ…
さて…わらわがランプの中に留まる理由も無くなってしまったのう…
次はそなたの中でバビロナの平和を見守っていくとするかのう…千夜を一夜のように見てきた王女…
……千夜一夜王女…し、しかしマザー・ハーロット様…私はあなた様から頂戴した精霊の身体…
……そなたは気付いておらんのか?…炎を手に宿してみよ…
ジーニャは右手に炎を宿した…かつてないほどの勢いで炎は燃え上がった…
……こ、これが私の力…?まるで…
……その通り…そなたも妹も…あの時わらわが精霊として蘇らせた者は全て魔法使いとしての生命を取り戻しておる…
そなた達ももう〝バケモノ〟と自分達を卑下することも無かろう…
……マザー・ハーロット様、今のお言葉はいくらマザー・ハーロット様でも…
……すまぬすまぬ…冗談にも度が過ぎておったな…
……いえ、ただ…あなたから生命を頂戴しなければ私は今のあの方と巡り逢う事は出来なかった…
どれだけ感謝してもし尽くせないのです…
……これからはそなたが魔法使いと精霊の架け橋となって欲しい…頼んだぞ…わらわも共におる…
……勿論です…そして人間達とも手を合わせれば…
……うむ!!さあ…そろそろ行くがよい…仲間がそなたを待っておるぞ…
……はい。これからもよろしくお願いします。大いなるバビロナ様…
ジーニャの身体はまた白い光に包まれて意識が…遠…のい…て……………
……………
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