第50話 近づく決戦の刻

「ウチの姉ちゃんはネクロマンサーとしてだけでなく魔法使いとしてもバビロナで一、二を争う使い手なんです。


恐らく今はアイツ…イミテ…でしたっけ?みんなを守ろうとして、その男のご機嫌を取るために仕方なく一緒にいるんやと思います。


コッカトリスに石にされたウチの事を心配してくれてるやろうに…その気持ちを押し殺してアイツに仕えるなんて…うううう…」


姉の事を想って涙を流すジーナを見て…そして妹を想いながらも国の為にと尽くすジーニャの想いを推し量った優也は居ても立っても居られなくなった。



「ヴァル…この際、ジーナの作戦に乗ってみないか?慎重になるのも大事だけど、このまま手をこまねいて待っていても仕方ないよ…


ひょっとしたら奴は空中庭園でジーニャを人質に僕達を待ち伏せしているかもしれない…慎重になるのは大事だけど変に奴に策を考える時間を与えないほうが良いかもしれない…」


僕の言葉にヴァルは少し考える素振りをみせてから

「そうじゃな…優也の言う事にも一理ある…ここは奴の懐に飛び込んでみるとするか…?皆はどうじゃ…?」


ヴァルの呼びかけに顔を見合わせて頷く一同…


「決まりじゃな…但し、勝負は一瞬じゃぞ…長引けば長引く程、わらわは毒や石化、体力の回復に回らねばならなくなる…ジリ貧にならんよう…最初から全力で行くぞ…」


僕はヴァルと目を見つめ合ってお互いに決意を確かめ合った…言葉を交わさなくても分かり合える…

信頼という言葉以上のものが二人の間にはあるからだ…


僕は拳をギュッと握ってジーナの顔を覗き込んだ。


「バビロナ空中庭園へ…案内してくれるかい?」


ところが彼女から意外な答えが返ってきて僕は少し拍子抜けしてしまった…



「殿…ウチの作戦にはまだ続きがあります…その続きには少々時間がかかります…


しかし…これが成功すれば確実に奴と…コッカトリスを…」



「い、一体…それはどんな…?」




「それはやね……」




ジーナの話に一同は耳を傾けた…












バビロナ空中庭園ではイミテがバビロナ神殿を見下ろしながら呟いた…


「もうそろそろ来る頃だね…アハハハハ…


ジュエラの真の王になり得たボクちゃんをこんな目に合わせたアイツらを絶対に許さないぞ…」



その場所からかすかに見えるバーベラの塔…

建築中に雷が落ちて神の怒りに触れたと皆が寄り付かなくなった曰くの崩れかけた塔である。




「クワッ!クワッ!…フシュルル…」


塔の頂上で紫の煙を口から漏らしながら巣食う黒い影…



イミテはその影を見つめながらまた呟く…



「さあ…今度は何体の石像が出来るかな…?」



「イミテ様…!」



「ん?どうしたんだい?…ジーニャ…」



「私があなたの妻になって…忠誠を誓えば…

ジーナを…妹を元に戻して昔の豊かなバビロナにしてくださるというのは本当なのですね…


「あー…うん…もちろん本当だよ…

だから今日こそ一緒にお風呂に…」



「…すみません…バビロナでは婚礼の儀の後でしか夫婦の契りを交わせぬしきたりがあるのです…」




「ぬぬぬぬ…仕方ないね…じゃあ先にあの憎っくきプラティナとゆかいな仲間達を片付けてしまおうか…


そしてその後ゆっくりとジーニャを…ムフフフ…


あ、ついでにあの妹も頂いちゃおうかな…?」


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