第61話 あの方にソックリ

「ギャギャギャギャギャ…」


「お前達…もうすぐ石にされると言うのに余裕だな…!」


コッカトリスはジーニャめがけて急降下してきた…


「クロノ!!」「ミナイ!!」



…スピードが上がったコッカトリスのくちばしを優也はギリギリのところで時間を止め、ジーニャはその時間の中で動き続ける。


「では…行きますよ…優也様…」

 

「…ふう…分かった…」


目を閉じる優也の顔を見てジーニャは自然と表情がほころんだ…


…ふふ…優也様…


そしてジーニャは真顔になり、身体中の隅々まで神経を張り巡らせた。


「…はっ!」


ジーニャの身体から黒い渦が現れた…やがてその黒い渦は優也を包み込んだ…




闇に包み込まれた優也だが…その闇はまるで眠りに誘う様な…明日を夢見る為の闇のように感じていた。



…クロノが解け、目の前が真っ暗闇になったイミテとコッカトリスは驚いた。


「な、何だ…急に…」


「ク、クワックワッ…バタバタバタバタ…」



やがてその闇はその場所に立っている一人の人物の中に吸い込まれていく…



「…お、お前!」



そこに立っていたのは…少年ではなくターバンを巻いた精悍な若い男性…



ほうきに跨ったヴァルやティナ達の目はその男性の姿に釘付けになった。


「ほほう…優也・千夜一夜アラビアン・ナイトモードか…」



優也は左手に着けた鏡の盾に自分の顔を写して見た…


「あっ…も、元に戻った…」



優也自身は大人に戻れたと喜んだのだが、優也と一つになっている姉妹は優也の姿を見て息を呑んでいた…



「そ、そんな…殿がこんなに王子ソックリだなんて…ウチらと一緒になったから…?」


「ああ…シャブリヤール様…幻だとしてもお逢い出来て嬉しいです…」




「フン!お前が大人になったところで何も変わらないさ…コッカトリス・ゾンビ…やってしまえ!」



挑発してきたイミテに身構える僕…


「アクセル!!」


突然ジーナの声が頭の中で聞こえた。




「お前の身体に風穴を開けてやるわ!」


超スピードで優也に迫るコッカトリス…




その時…


腰の青と緑の宝石が柄に装飾された刀を抜いた優也…


そして超スピードで自分に迫るコッカトリスの嘴をギリギリまで引きつけて避ける…



ザシュッ…!



優也は思いっきり振り上げた刀を振り下ろした。



コロン…



優也の足元に硬いものが転がる…



「グギャギャギャギャギャギャギャ…ギャア!」


突然…暴れ出すコッカトリス…



「ど、どうしたんだ…?」


首を振り…口から血を撒き散らす姿にイミテも不思議そうにコッカトリスの様子を調べる…




「あっ!」



イミテはコッカトリスの嘴の途中から先が無くなっている事に気付いた。


「ま、まさか…斬り落としたというのか…?

あの超スピードの中…」



「ヘッヘーン!ウチは自分では大した事は出来へんけど補助魔法はレガシーを使えるんやで…


これぞ内助の功やろ…?テヘッ!」




僕はジーナが頭を小突きながら舌を出す映像が頭に浮かんで思わず吹き出してしまった…

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