第100話 宝石に込められた想い

意識だけのジーニャは空中庭園の上空まで帰ってきた…



目はうつろでガックリと項垂れながらマザー・ハーロットがとどまっているチャペルの祭壇へと吸い込まれるように入って行った…



ジーニャが我に還るとマザー・ハーロットは静かに彼女を見守るように見つめていた。



……マ、マザー・ハーロット様…大変失礼致しました…私、自分を見失ってしまって…



……構わぬ…そなたの気持ち…解らぬでは無いぞ…

そなたの身体はまだ回復するには今少し時間が必要じゃ…ここで休むがよい…



……はい…ありがとうございます…



ジーニャはふと自分の左手首のブレスレットに目をやった…「あら…?」


いつもは森の木々のような緑…フォレストグリーンのアレキサンドライトがワインの色のような…バーガンディーに変わっていた…





……優也様から頂いたブレスレット…そうかアレキサンドライトは当たる光によって色が変わるんだっけ…





優也様…私をジーナと呼んでくれて…バビロナの復活を懸命にサポートしてくださった…

 




バビロナは願い通り復活した…しかし…私の望みは…本当は喜ばなきゃいけないのにね…私、王女として失格だ…



……決してそんな事は無いぞ…



……えっ?



……そなたは確かに失ったモノも少なくは無い…しかし、それを超える程の素晴らしいモノを手にいれておる…それは懸命に国を支えてきたそなたでなければ成し得なかったことじゃ…




それは目には見えないモノも沢山ある…それ故にあの男はそのブレスレットに…宝石に想いを込めたのじゃ…



過去を振り返っているそなたは昔見た夕陽の色…バーガンディー…これからそなたが築いていくバビロナ王朝の色は緑にあふれ生き生きとしたフォレストグリーン…





あの男は過去も未来も大切にするそなたであって欲しい…そう想いを込めてそれをそなたに託したのじゃ…」






……優也様… 再びジーニャの目に涙が浮かぶ…





……あの男はそなただけでは無いぞ…

仲間に贈った宝石には全て意味がある…





そなたの妹には…ターコイズ…大自然のような深い愛情でずっとそなたを励まし続けて…その明るさでみんなを照らしている…





ソーディアの王女には…エメラルド…優しさと知性…才色兼備の持ち主…周りの者に癒しと安らぎを与え続ける…





ミラールの王女には…真珠パール…内面の美しさ…そして神聖な魔除けの護りでもある…

人間界では有名な女帝…クレオパトラも彼女のように真珠の耳飾りをしていたと言うぞ…



そしてあの男の妻…ジュエラ王女には…ローズ・クォーツ…女性らしい美で自身への愛を磨き、その愛で家族を…そして周りの者にも愛を与える…まるで優しく見守る母のような愛を…




最後には自分の守護霊…ヴァルプルギスにまで…

オニキス…黒く光を通さないが艶やかな光がとても美しい…


他人ひとには理解してもらいにくい自分だけの輝きをあやつは理解して貰っておるのじゃな…






あんな男に愛された女性はみんな幸せじゃな…

そしてそなたも間違いなくあの男に愛されておる…





ジーニャは目を伏せた。



…そしてマザーハーロットを再び見つめる。






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