第60話 幼き日の記憶
「クワックワックワッ…ギャア!」
イミテは攻撃を受けて苦しんでいるコッカトリスの口に向かって持っていた錠剤を投げ入れた。
薬を飲み込んだコッカトリスはグッタリと横になった…
「な、何だ…奴は一体何をしたんだ…?」
見る見るうちにコッカトリスの身体は紫に変色し、
その口からも紫色の煙を吐き出し始めた。
そしてムクッと起き上がったその目は真っ赤に輝いている…
「奴め…
「えっ?」
ヴァルの言葉に僕は驚きを隠せない…奴は自分が召喚した召喚獣でさえ、己の身勝手で命を絶ってしまうのか…
許せない…絶対に!こんな奴にバビロナを…いや、僕の大切な人達が暮らす世界を無茶苦茶にされてたまるか…!
しかし…僕の決意をよそにコッカトリスに乗ったイミテは「ハッハッハッ…またパワーアップしたなあ…!行くぞ…!」
「ギャギャギャギャギャ…ギャア!!」
けたたましい雄叫びを上げたかと思うと目で追うのもやっとのスピードで飛び上がり上空を旋回し始めた…
空を見上げてジーニャは悲しそうな表情で震えていた…
少年の優也は彼女に駆け寄りニコッと笑いかけた。
「君の夢に一歩踏み出せたんだね…良かった…
君は僕が守るよ…ジーナ…」
「……!」
優也の言葉に驚いて…涙が溢れ出るジーニャ…しかし、優也に背を向けて涙を隠しながら驚きを誤魔化すように叫んだ。
「い、嫌ですわ…優也様…私はジーニャです…
妹と名前を間違えるなんて…私をお忘れですか?」
「あ、そ…そうだね。どうしちゃったんだろう?ゴメンなさい…ジーニャさん…」
ジーニャさん…怒ったのかな? 僕が心配していると彼女は後ろを向いたまま…
「そんな子供の姿であの方に勝つのは無理です。
私とあなたが一つになり…妹と三人で闘うのです!」
そう言って彼女は涙を拭って僕の方に向き直り、真っ直ぐに見つめてきた。
優也の目をじっと見つめるジーニャ…
生前の…バビロナの魔法使いだった彼女の幼き頃の記憶が甦る…
「では…シャブリヤール様も魔法の修業を…」
「ああ…父上に付いて国王職の事を色々勉強しないとね…君も…修業に就くんだろ?しばらく会えないかもしれないけど、お互いに頑張ろうね…」
「はい!立派なネクロマンサーになれるよう頑張りますわ…シャブリヤール様もお身体をご自愛くださいね…」
「ははは…ありがとう…」
シャブリヤール王子は彼女の目を真っ直ぐ見つめてニコッと笑いかけた。
「君の夢に一歩踏み出せたんだね…良かった…
君は僕が守るよ…ジーナ…」
未来を語り合う幼い二人をバビロナの夕陽が優しく見守る…
優也の目は不思議そうに思い詰めた表情のジーニャの姿を映していた。
…優也様は何故…あの方と同じように私をジーナと…?
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