第65話 主君と従者

優也は右手と左手の玉を押し潰すようにして混ぜ合わせた。


そして魔法陣の中に吸い込まれそうになってもがいているコッカトリス・ゾンビに向かって投げつけた…


「オメガ・バースト…はっ!」


「ギギギ…ギャア…!」


優也の放った光と闇の混ざり合った玉にコッカトリス・ゾンビは吸い込まれた…そしてその玉も魔法陣の中に消えて行った…


「終わった…」


「やったな…優也!!」


ヴァルは僕と笑顔を交わす…


「君のおかげだよ…ヴァル!!」



優也は元の姿に戻った…二人のジーナもじゅうたんの上に現れてみんなで顔を見合わせて微笑み合う…



ロジャーやレーヴァが闘っていたバジリスクもコッカトリス・ゾンビが消えたのと同時に蒸発するよう

に消えてしまった。





優也達が乗ったじゅうたんはゴルドやマサムネが指揮を執るソーディア軍のところに帰って来た…


そしてゴルドとマサムネは縁の下の力持ちの兵士達をねぎらった。


「皆の者…よくやった!皆の踏ん張りが魔法使い達の勝利を生んだのだ!」



 ロジャーとレーヴァは固い握手を交わす…


「やりましたね…私達の姫も国も私達の手で守ったのです…」


「ありがとう…レーヴァ殿…あなたのような主君想いの方と一緒に闘えて嬉しい…この闘いの事は生涯忘れませんぞ…」


「そんな…ロジャー殿…実は私は昔…」


「ロジャーさん…レーヴァ隊長は我がソーディアの…いえ…私の誇りなのです。


レーヴァ隊長…これからもよろしくお願いしますね。」


ナギはレーヴァの側に歩み寄って彼に頭を下げた…


「も、勿体無うございます…こんな一兵卒に…」


レーヴァは涙ぐんだ。







「何故…ソーディア軍が世界最強と言われるのか

分かったような気がします…」



ロジャーは胸に手を当てて素晴らしい主従関係に敬意を表した。




「将軍!ウチらも頼りにしてるでぇ…」


ジーナはロジャーの顔を覗き込んだ。


「ひ、姫様…」


ジーニャもロジャーに歩み寄り…そしてナギと同じように頭を下げた。


「将軍…これまですみませんでした。


私はもう昔のように誰の命も失いたく無い…

その為に人払いをし、私一人でバビロナを外敵から守る為の努力をしてきました。


時にはプライドを捨てて…


何故…皆に頼らなかったのか…

こんなに頼りになる人達が周りに居てくれるのに…


これからもバビロナをよろしくお願いします…」


「ひ、姫様…参りましたなあ…」


ロジャー将軍は一瞬、困った顔をして…そしてジーニャに向き直って頭を下げた。


「私で良ければバビロナの為に尽くさせて頂きます…」


「あなたで無ければ無理なのです…よろしくお願いします…」


ジーニャも将軍に頭を下げる…


その様子を見ていたナギとレーヴァ…

優也達はみんなで微笑み合った…




「よおし!!みんなで祝杯を上げようではないか!!


シルヴァ…ラリーに連絡して色々用意するように

頼んでくれないか?」


「まあ!あなた…またラリーさんがこんな時だけ?って言われて怒られますわよ…」


お義母さんの言葉にその場が笑いに包まれた…

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