第8話 ひきな餅と野菜の酢漬け
よねさんはお昼過ぎ目が覚めてキッチンに立つと目玉焼きを5人分フライパンに落とした。トーストとコーンスープも作り皆が降りてくる前に一人食事を始める。
しばらくすると、はやこさんが降りてきてよねさんにトーストと目玉焼きとスープの場所を聞いて向かえに座った。
顔のアザはだいぶひいて、痛々しさがなくなってきている。はやこさんはトーストにジャムを塗りながら話した。
「結局、アザや打撲だけですんで幸いだった。そうそう、病院に何回か通っていたらね?先生が、貴方ここで働きませんか?っていうの。」トーストをかじってジャムが口からはみ出たのでティッシュで拭き取るはやこさんはもう元気を取り戻していた。
「いい話じゃないかい?それでどうしたんだい?」
はやこさんは、スープを飲みながら話を続けた。「もちろん、即採用になったわ。医療事務の空きが出て年齢も資格も不問でいいそうよ。だけどもう資格の勉強はしてるの。60代で就職するなんて思わなかった。」
よねさんは手を叩いてはやこさんの就職を喜んだ。
はやこさんは、今後旦那さんとのあいだも、整理していくらしい。
朝食を食べ終わると、はやこさんはよねさんの分まで食器を洗い始めた。
「それでね?玄さんが、よねさんの家を増築して一緒に暮らしたらいいんじゃないかっていうのよ。よねさんも何かあったときに一人じゃ大変だろうからって。」
よねさんは、コーヒーを入れながら、ビックリした表情をした。
「ここではやこさん暮らすのは大丈夫なのかい?もっと、安全なところの方がいいんじゃないかい?」
調度で寝ぼけ眼のあかりちゃんが、挨拶をして降りてきた。よねさんは、あかりちゃんに朝食を出してあげた。
はやこさんの意思は固く、もう玄さんの知り合いの大工さんが無償で家の1階部分を増築する話が進んでいるらしく、よねさんは話を知らずにいたのだが、まあ皆がそうしたいというのならと引き受けた。
すかさずあかりちゃんが「私もここに住みたい。」と言い出した。よねさんはすぐに「あんたは駄目だよ。これからの人なんだから。」と即答した。あかりちゃんは、すねたような顔をしていたが、しばらくして専門学校に通う話を話してくれた。寮に入り、親元からも離れて暮らすことになったそうだ。お金は、親が払うようで、話が落ち着いたそうだ。近々、ここを出て寮に入るそうだ。
よねさんは、またもや拍手して喜んだ。あかりちゃんは寮じゃなくてここから専門学校に通学したかったらしいが、それには誰も賛成せず寮に入ることになった。
よねさんは、昨日親子が来て2階に泊まっていることを少し話はやこさんとあかりちゃんに優しく接してあげて欲しいと話した。しばらくして、親子が降りて来ると、あかりちゃんは娘さんに明るく話しかけたり、はやこさんは、婦人に朝食を運んであげたり、肩を撫でて笑顔で接した。どれもよねさんから、してもらった愛情だった。
その後、はやこさんとあかりちゃんは窓拭きや玄関掃除を率先して働いた。娘さんはあかりちゃんと仲良くなり、隣にいてお手伝いをしていた。よねさんと婦人はひきな餅を作り始めた。婦人は餅を焼いて、よねさんは野菜やきのこを鳥もも肉をだし醤油で煮る鍋の横で千切りにして言った。
した湯出をした大根と人参をだし醤油のなかにいれて鳥もも肉も千切りにして入れると肉の油がスープに混ざりキラキラ宝石のように輝いた。最後に餅を入れてせりを散らせば出来上がり。
ひきな餅と前もって酢漬けにしておいた野菜を取り分けみんなで食べた。
よねさんは、日のあたる下で汗をかいて栄養のあるものを食べて、睡眠をとると人は元気になると信じていた。
皆が元気になりますようにとただそれだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます