第5話 妊婦さん

 正午頃、よねさんはゆっくりと起き出しトーストを3枚トースターに入れる。トーストの上にはバターをおき溶かしながらこんがりと焼くのが定番。

 知らぬ間にはやこさんも帰宅しまだ寝ていた。

 そこへ、戸が開き妊婦さんが入って来た 「少し休ませてもらえませんか?」臨月の大きなお腹がまん丸で、歩くのも大変そうだ。

 「いいよ。好きなとこへお座り。」

 「ありがとうございます。」妊婦さんは、ゆっくりと腰かけた。手でお腹をさすっている。

 「ほら、麦茶だよ。トースト焼いたけど良かったらお食べなさい。」

 よねさんも座って、トーストにかじりついた。サクッといい音がする。

 その他に、茹で玉子とコーヒーにベビーリーフのサラダが並んだ。よねさんは、妊婦さんに何にも聞かなかった。ただ、トーストや卵を進めるだけだった。

 妊婦さんは、トーストを1枚食べて麦茶を飲み、黙ったままだった。

 よねさんは、妊婦さんの腰にクッションを入れてやり自分は席を離れ洗い物をした。今の妊婦さんは死という絶望から何も話し出せずにいる。赤ちゃんの話もタブーである。

 妊婦さんは、結局2階の残りの空き部屋で休むことになった。よねさんは、何も語らない妊婦さんがもしかしたら部屋でと心配になったが、今の彼女には休養が必要だし、なるようになると腹を決めた。受け入れようと思った。

 一応玄さんに陣痛が起こるかもしれないからその時はと連絡だけ入れた。

 はやこさんは、トーストを食べるなり今日も病院へ出掛けた。

 あかりちゃんは、トーストを食べて眠いとまた2階に上がってしまい、よねさんはいつも通り店の準備を始めた。

 



 


 

 

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