第4話 はやこさんとあかりちゃん
目が覚めると、お昼過ぎでお日様が高く登っていた。
昨日のミネストローネに茹でたパスタを混ぜて、スープパスタを作っていると、はやこさんが二階から降りてきた。
「調度できたからお食べなさい。」
はやこさんは、席につきパスタを食べ始めた。
「ところで、病院へは行ったのかい?頭や首は大事だから一度診てもらった方がいいよ。また玄さんに診てもらおうか?」
玄さんとは森の麓で病院をやってるお医者さんで、よねさんとは長い付き合いの少々口の悪いおじいさんである。
はやこさんは、パスタを食べ終わると後片付けをして、玄さんの病院へ向かった。顔中あざだらけのため、昼休みに特別に診てもらえることになったのだ。
山家さんと眼鏡をかけた婦人が訪ねてきたのは、夕方の頃であかりちゃんはそれが母親だと気づくと下を向いたままだんまりだった。
「あかり、貴方一体いつまで親に迷惑をかければ気がすむの?」
「…」
「まあまあ、お母さんコーヒー入れましたのでどうぞ、おかけください。」
山家さんとお母さんが、席について少し離れたテーブルにあかりちゃんは座っていた。
山家さんが切り出した。
「まあ、今回はあかりちゃんが、無事で良かったじゃないですか。」
「そうだよ、命があるのは尊いことなんだから。」
よねさんも頷きながら付け加えて話した。
しかし、あかりちゃんのお母さんは、あかりちゃんよりも、親がどれだけ苦労してきたか、育てるのに手を焼いたかしかなかった。また、家に戻ったとしても、家出するのが目に見えているので、帰されても困ると言うのだ。
これには山家さんも困ってしまい、親子なんだからと言っても、娘を施設に預けたいの一点張りであかりちゃんの存在より自分たちの生活の方が優先されていた。
よねさんは、「わかった。わたしが預かるよ!お母さんそれでいいね?」
お母さんは驚いた表情になり「申し訳ないですけど、こんな人気のない森のなかは…」と口を濁したので「でも施設には行きたくないってあかりちゃんは言っているんだよ?」と言い返すとお母さんはしぶしぶ了承した。
山家さんが、見回る約束をしてあかりちゃんはよねさんのところに居ることになった。
二人が帰った後、裏の畑であかりちゃんと水やりをしていると、あかりちゃんがよねさんに話しかけた。
「あっ、今男の人が森に入っていったよ?山菜でもとるのかな?」
よねさんは、あかりちゃんに真面目に話しかけた。
「ここの森に山菜なんて取りに来る人は一人もいないんだよ。あの人は、死にに行ったんだ。この森は昔から自殺の名所なんだよ。」
あかりちゃんは、驚いてすぐに止めなくちゃとか、警察に教えなくちゃと騒いだが、よねさんは「あちらから来れば関われるけど、こっちからいくら言ったって、とぼけられたりかえって感情を逆なでてしまうことが多いから、何にもできないんだよ。」と事情を説明した。
その夜は、あかりちゃんも一緒に店に居たが、訪れる客はいなかった。
朝方、それぞれの部屋で眠りについた。
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