第7話 やつれた婦人と娘
今日も夜に店を開いて、よねさんは暖炉の前の椅子にうたた寝をしていた。
カランカラーン。戸が開くと、雨に濡れた婦人と娘が立っていた。
「あらあら、バスタオル持って来ようね。暖炉の近くに来て暖まりなさい。」
バスタオルで濡れた頭を拭いてふたりは暖炉のそばの椅子に腰かけた。
「野菜のポタージュ作ったんだけど、お食べなさい。」
二人にマグカップを手渡し、親子はゆっくりと飲み始めた。
よねさんは、バターロールも手渡しスープにつけて食べるよう促した。
「温かくて美味しいです。」婦人は涙目で声を震わせた。
「そうかい。それは良かった。お風呂入りなさい。今は何も考えないで、そうしなさい。」
娘さんが先にお風呂に入り、婦人はよねさんから差し出されたお茶を飲みながら、話始めた。「私は結婚して15年になります。娘は小学生です。夫が発達障害の診断を受けていて、他にもパニック障害等で薬を飲んでいます。結婚した当初からでしたが、夫は、思いやりの気持ちがなく、私はだいぶ精神的に傷ついてきました。何度言っても治らず、傷つくからやめて欲しいと言っても、何故そんなことで傷つくの?と反省や謝罪に至らず、いつも成長がありません。普通なら自分がそう思わなかったとしても、相手に合わせたり、気を付けたりしますよね?夫は気にしやすい私が悪く自分は正しい。後はうざいといって、謝りもせず傷ついたままにされます。」
よねさんは、お茶を飲みながら深く頷いた。「よく頑張ってきたね。さぞ、辛かっただろう。貴女が暴力を受けたことは?」
婦人は、「殴られたりはなかったけれど、殴りかかってきて近くの壁をなぐられたりはありました。娘を抱いた状態でした。」
よねさんは、すぐに言った。「それは、殴ったのと同じだよ。貴方のなかに恐怖を感じたことに変わりはないんだから。」
婦人は、ティッシュで鼻をかみ頷いた。
よねさんは、「カサンドラ症候群を知ってるかい?」と切り出すとカサンドラ症候群とは、相手が発達障害などで情緒の交流や言葉のコミュニケーションが困難なため、一緒に生活している人たちが精神的にも肉体的にも調子が悪くなっていくことを説明した。
よねさんは、婦人と娘をお風呂に入れてやり、2階で休ませた。
二人が追いつめられて森へ行かなかったことに、良かったと思い、元気になる食事をとらせてとキッチンで調理をはじめ、明け方店を閉めて、奥の寝室に引っ込んで無心に眠った。
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