第17話 森のスープ屋さん

 新しく建てられた家では、富子さんが中心となってせわしなく働いている。

 ボランティアの人は、アルバイトに切り替わって昼夜を、6人でまわしている。

 朝食をとって仕事前のはやこさんが、花瓶に彩られた野花を綺麗に生けて、写真立てに笑うよねさんに手を合わせる。

 「よねさん、いってきます。」

 よねさんが亡くなって、1年が過ぎた。息子の家に行く途中、脳卒中で倒れそのまま帰らぬ人になったのだ。

 よねさんの意思を継いで、今でも店はちゃんと開いている。以前よりも人が増えて、24時間体制になっている。働く人のなかには、資格を有する人も何人かいて、空き時間にカウンセリングの勉強会までしていた。

 今日も真っ青な快晴のなか、はやこさんは、豊子さんに見送られて車のエンジンをかける。

 

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森の小さなスープ屋さん 山葡萄 @yamabudo

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