第14話 よねさんの過去

 今2階にいる人たちは、方丈様とはやこさんだけだ。

 あかりちゃんは、先日寮へ引っ越していき、豊子さんと娘さんも近くのアパートが見つかって引っ越して行った。

 豊子さんは、お昼過ぎに店に来てよねさんと一緒に店の事を話し合っている。大工さんにもお昼過ぎからにしてもらい午前中は睡眠時間にあてた。

 少しずつ隣に家が建っていく。今の小屋は後から取り壊すことになった。

 方丈様が店に帰って来た。今日も、大変だったご様子でひどく疲れている。

 豊子さんも来ていたので、みんなで食事にした。温野菜のスープスパゲッティーがテーブルに並ぶ。

 あつあつのスパゲッティーをふうふういいながら食べていると方丈様がよねさんに尋ねた。

 「何故この店を開こうとされたのですか?」

 よねさんは、しばらく黙っていたがやっと話始めた。

 「夫がこの森で自殺したんですよ。もう何十年も経ちますが、それで供養になればと思いながらやっています。」

 「そうでしたか…話しづらいことを聞いて申し訳ありませんでした。」

 「いいんですよ…子供たちからも、反対されて当時は縁を切るとまで言われました。今では、お正月に子供の家に遊びに行けるまで仲が

回復しました。」

 よねさんは、いつも明るいと思っていた豊子さんは何も話しかけることが出来なかったが、よねさんの手をずっと握ってあげていた。

 よねさんは、本当に久しぶりに泣いた。

 

 

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