第14話 どうみても不審者の仲人

「わっ、このかばん・・・。ええわあ〜」

いつものお店でショルダーバッグを購入。

というと、なんかブランド感でますが、そこは西友巣鴨店の入り口特価コーナー。

お値段2,500円なり。


バッグはA5サイズ(A4サイズの半分)ぐらいの大きさで、ポケットがいっぱいあります。しかもミチコロンドンのロゴ付き。西友限定商品でした。

西友価格でブランドバッグをゲットできるという素晴らしさ。お値段以上のニトリ以上です、わっはっは。


ということで毎日ショルダーバッグを肩にひっかけてどこにでも出かけております。


しかし、ある日事件が起こりました。

とある日曜日の朝のこと。私とひよこさんは礼拝に行くために山手線に乗りました。

(えー、ワレワレハクリスチャン)


その日は日曜日のわりに全く座れないほどに混雑していました。

つり革を持つ私の隣は、モデルのようにすらーっと背が高くナイスバディなイケメン男性になりました。またなんだか強い香水の香りもただよってきました。


髪の毛も茶髪で明らかに朝から入念にセットしている様子。

中川大志(朝ドラ「なつぞら」のヒロインの夫)みたいな雰囲気でした。


「今の子は背も高く、脚も長いなあ」と思って下に目をやったとき、私の目玉飛び出してしまいました。


なんと、なんと


私とバッグがペアルックになっているんです!!!!!

色も全く同じ!!!!!!!


ーーおい、イケメン。おまえ絶対にやったらあかんことしてるぞ。

そこまで決めているんなら西友のショルダーバッグは絶対に使うな!!!!!!


一度、私は目を閉じました。

そしてイケメンの立場にたって想像をはじめました。


ーー香水あんだけふってるのは、デートでしょう。

朝のヘアセットにも30分はかけてるっぽい。服も自分の予算内で精一杯のおしゃれをしたのでしょう。きっと高い服ではなくて、いろいろ組み合わせて、自分がかっこよく見えるスタイリングを研究しているでしょう。


そんな彼がある日なぜか西友に立ち寄った。一人暮らしのご飯を買うためだったかもしれません。このショルダーバッグ、西友限定商品だからね。


「ミチコロンドン、ブランドで安いじゃん」ーーこうしておしゃれに取り入れたのでしょう。


しかしあなたのその判断は今、となりにデブの42歳アラフォーとペアルックになるという事故を引き起こしています。彼がこの現実に気がつくのも時間の問題です。


もしこの現実に気がついたら・・・

彼は朝から萎えてしまうこと間違いなし!


私は腐っても仲人です。結婚を取り持つ仕事をしており、日々そのための努力を研鑽しております。

その私の存在が、いままさに男性の気持ちを萎えさせ、デートに差し支えるほどの精神的ダメージを、しかも会心の一撃を与えようとしているのです。


出した結論→「ハッ!! いかんこれは! 仲人としてこのまま放置は許されん!」


私は、ショルダーバッグをイケメンとは反対側のひよこさんのほうにくるっと持ち替えました。


そしてそのショルダーバッグを全力で握りしめました。

バッグのデザインが見えないようにずーっと持ち続けました。


「上野〜上野〜」

彼からバッグが見えないようにかに歩きでホームへと急ぎました。


ホームから彼を見ました。スマホを見ながら微笑んでいました。


恋は無限にできると思わないでねと心で呟きながら、ひよこさんと歩いていくのでした。



以上!


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