第31話 もらったラブレターってどうしてる?

「大西さん、手紙というものはいいもんなんですよ」

一緒に現代ファンタジーを書いている友達がそう言いました。(カクヨムコンテストに出す予定でまだ未公開)


その友人は、1ヶ月に1回結婚した日ごとに奥さんにLINEでラブレターを送っているというのです。来年には家族が新たに増えます。


退職時にお世話になった人、ひとりひとりにお手紙を書いたとのこと。

現在、彼は会社を退職して独立後も、その会社から仕事の依頼があったりします。


「手紙ってすごい!!」

思わずスタンディングオベーションしたくなりましたよ。

だって、手紙が絆を保存して、また新しい絆を生み出しているんですよ。

いま流行の退職代行とは真逆に行きます。

が、手紙もまた現代に合っているのではないかと思いました。


「大西さんも旦那さんに手紙を書いたらどうですか?」

「いや〜、私はちょっと恥ずかしいわ。なんかそんなことしたことないし」

「もらったことないですか?」

「ん、もらったこと・・・ある」


すごく昔だけれどありました。20年ぐらい前です。

前の夫です。デートのたびに、手紙をくれました。


黄色い便せんになんかオシャレな茶色の柄の封筒に入れてありました。

いつも同じ便せんに同じ封筒。

最初はうれしかったけど、あまりにも増えて置き場に困ってしまいました。


そんな話を友人にしましたら、

「大西さん、その手紙どうしたんですか?」という話に発展していきました。


確実に、いま家にはありません。(あったら大事です)

はて、どうしたもんかいな。


うーんと、しばらく考えていて、思い出しました。

「別れたときにね・・・」

すべて話すと、友人は絶句していました。


今からそのお話を書きます。

さかのぼること、10年以上前の話です。

わたくし、31歳になったばかりの頃ですね。


引っ越しの段ボールの中から和菓子屋の紙袋が出てきました。

その紙袋の中をのぞいて、ひとりで「わっ!」と叫びました。


結婚前からもらい続けていたラブレターが大量に出てきたのです。

協議離婚でお互い罵り合って終わった後に、これ!!!


「どないしよう・・・」

あのころあんなにうれしかったラブレターがただの怨念の塊にしか見えず、途方に暮れましたよ、ほんまに。



そんなある日のこと。ふらふら畑の道を散歩していたら、近所の60過ぎたぐらいのおじさんが何やら焼いていました。

東京の人は考えられないと思いますが、当時住んでいた場所は、畑が広大で周りに住宅が少ない地域なので焼いても文句を言われることもありませんでした。


「おじさん、何をしているんですか?」

「いまな、いろいろ焼くついでに焼き芋つくってるねん」


それを聞いて思いつきました。

「おじさん、私も焼きたいものあるんやけど、ええ?」

「ええよ、もっといで」


私はダッシュで家に戻り、怨念の塊がいっぱいに入った和菓子の紙袋を持ってきました。


「ハアハア。ハアハア」

「そんなにあわてんでもええよ。それにしてもいっぱいあるな」

「そやねん。これ全部焼きたいねん」

「じゃ、くしゃくしゃってして中に入れて」


封筒から手紙を取り出し、思いくっそ、くしゃくしゃにしてやりましたよ。

そして、「これでもか、これでもか! うおおお」とか言いながら。


おじさんはその私の狂気に満ちた姿を見たせいか、何を焼いているのか聞かないでいてくれました。


あっけなく手紙は燃えて炭になり、一部は空中に舞っておりました。


その炭の下には無事にサツマイモが焼けていました。


「お姉さん、焼き芋食っていくか」

「ええんですか」

「ええよ」

そう言って、畑で二人で焼き芋をモグモグ食べました。


そのあと、おじさんが「ちょっとおいで」と家のほうまで呼んでくれました。

(東京の人が聞いたら、めっちゃやばく感じる展開かもしれませんが、田舎はこんなもんです)


玄関に行くと、壊れた傘の骨に干し柿が大量にぶっささっているのが見えました。

「干し柿も持って行きなさい」

そう言って骨から干し柿をとってビニール袋に入れて渡してくれました。



もらったラブレターを焼き芋に変えたやつは多分世界で私だけだと思います。

干し柿も美味しかったので、彼のことを恨むのはやめました。



以上!

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