共鳴するふたつの魂

「透明」という言葉は全編を包むキーワードです。ピアノの音色も、ミヨシ君の存在も、先生の想いも、全てが透明感に溢れています。

少年のかたちをしながら老成し、自らの終わりを受け容れることで透明度を高めてゆくミヨシ君。そして語り手であるササオカさんもまた、社会や常識というものを知りながら、そこに嵌まり切れない、濁ることのない少女性を持ち続けて大人になってしまったような女性です。そのためでしょうか、二人のつかの間のふれあいは、あたかも二つの同じ魂が共鳴する時間のように感じられるのです。

ラストはピアノ曲を聴き終わったあとの切なくも清々しい余韻と同じ。幸せな女の子という言葉が胸に沁みます。

おのれの「生」を静かに熟思するとはこういうことであり、きれいな日本語とはこういうものだというお手本を見せてくれる作品です。

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