透明な音楽に包まれたその人は、一輪の花のように儚くて清らかでした

まるで童話のような、明瞭でわかりやすい語り口の中に、語り手であるササオカさんの穏やかな心情が現れています。
その心は、ある出逢いを通してどんどん透明性を増していきます。

大きく乱れることのなく、打ちひしがれることのない、流れる水のような時間。
自由で繊細な、ピアノの鍵盤を操る指先のような動作。

彼女の目の前にいる、白い花のようで雛鳥のような、不思議な青年。
彼と過ごす時間が、ショパンのワルツとともにゆったりと揺らぎながら流れていきます。

透明なこの時間を、いつまでも大切にしたい。
美しい言葉で綴られる本作は、間違いなく誰の心をも魅了する純文学といえるでしょう。

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