雛鳥とオフィーリアのための鎮魂歌。

 無味乾燥な大学生活を終え、社会に出たばかりの主人公は、ピアノ教室に通い始める。そこにいたのは、10歳ほどの奇麗な少年だった。ピアノ教室の先生の孫だった。主人公は、ピアノ教室に遅刻した際に、少年と二人で留守番を頼まれる。そこで主人公は、少年の母が「白百合の病」によって亡くなっていることを知る。その病は身体に奇形を及ぼし、命を奪う、恐ろしいものだった。少年は母の奇形の手が白百合のようで美しかったという。しかし父親はそれに耐えられず、少年の元を離れた。そんな少年を引き取った祖父でさえ、怪しげな信仰に逃げたのだ。
 まるで雛鳥のような少年と、シェイクスピアのオフィーリアについて語らい、少年の年齢に驚く主人公。せがまれるままに、「子守唄」をピアノで弾く時、主人公はこれがレクイエムに聞こえた。
 少年がピアノと折り紙に固執する理由や、年齢。
 そして少年の酷烈な運命。
 そして主人公と少年の関係。
 それらすべてが重なり合って、意味を持つとき、物語の深みに至る。

 是非、御一読下さい。

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