やさしく、美しく、壮絶な物書きの一生

非常に美しい文章と描写で綴られる、とある物書きの女性とそれを支える男性の物語です。

久しぶりに憧れの先輩に会った主人公が、「いま、何してるんですか?」と問えば、彼女はこう答えます。
「死ぬ準備、かな」

そこから、死にあらがうための、もしくは死を完全なものにするための同棲生活が始まります。

タイトルになっている「花と頭蓋」のイメージが鮮烈です。言葉で説明するのがレビューなのですが、己の拙い文章力では言い表せない感情を頂きました。
たとえば美しい花や景色を見たとき、100人いれば100人が違った感じ方をすると思います。この物語の描写の美しさ、凄まじさも、言葉にしてみたらどれも何か違う気がしてしまって、うまく表せません。
ぜひ実際に読んで味わっていただきたいです。

死と真っ向から向かい合う女性の話ですが、壮絶ではあれど、悲惨さは感じませんでした。
愛を持って彼女を受けとめ、支える主人公の存在があったからです。
美しくて、切なくて、やさしくて……。とても栞のような壮絶な生き方はできませんが、地獄の底で芽吹いた花のような、ふたりのやさしい関係性には憧れを抱いてしまいます。

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