花は宿主を選ぶのか

『書かないと死ぬ』
ドキリとさせられる言葉だ。
モノカキを自称する人ならば、皆一度は経験しているのではないだろうか。

だがこの世界観の美しさよ。
脳のひだの隙間を文字で構成された花の蔓が侵食していき、その先端に蕾を成す。
その花が開いた時に彼女は花に取り殺される。

残された時間の中で、砂時計の砂がさらさらと音も立てずに積もっていくように、彼女の脳の中の花も先へ先へとその身を伸ばしていくのだ。

本当は……
この花は「書く事で成長が遅くなる」のではなく「書いたら書いただけその文章が花として成長していく」のではないだろうか。
彼女が『モノカキ』として生き、また死ぬために、その花は寄生する宿主を自ら選択しているのではないだろうか。

などと、モノカキの端くれは想像してしまうのだ。

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