簡単そうで難しい幸せへの物語

 教師と生徒、同性、貴族と平民などなど、作者のayaneさんが得意とする要素が詰め込まれた恋愛です。

 恋愛といっても様々あるのですが、イケメンやある程度、神様に贔屓された男女でなければ回せない話ではない所に、人同士の絆や感情を描ける作者の強みが活かされていると感じさせられます。

 読み進めて行くうちに、私は幸福について考えさせられました。

 このハードルがなければとか、この行き違いがなければとか、そういうものが浮かんでは消えていくのですが、最終的に私の中に残ったのは、それらが全てない、誰もが我慢する必要のない世界が幸福なのではなく、皆がちょっとずつ我慢すれば済むくらいの世界が幸福なのだ、という事でした。

 でも、その「ちょっと」が人によって様々で、主人公のアスターも、生徒のアリッサムも、親友のジンジャーも、皆一様に違っていて、だからこそ惹かれます。

 相手が悪いとは誰も言っていないし、自分が悪いといいだす登場人物もいない、優しい人達だからこそ掴んで欲しいハッピーエンドがあり、一気に読めます。

 簡単な一言で済んでしまう幸せが、とても難しく、だからこそ大切で、優しい物語です。

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