第16話
映画館の席って妙に高いんだよな……。
隣同士に座った俺たちは少し恥ずかしい気持ちになりながら映画が始まるのを待っていた。
すこし頬を染めながら映画が始まるのを待っているとただ、すこし恥ずかしくなってたまに柏木の顔を見てしまう。
すると柏木も俺の方を振り向いていた。
しかし、すぐに顔を赤くして俯いてしまう。
「そ、その……、な、なかなか映画始まらないね……」
体をガチガチにして、まっすぐ前を見ながら柏木が呟いてくる。
やはり柏木も今の状況を緊張しているようだ。
次第に周りの席も埋まっていく。
するとますます俺たちの距離が近くなっているように感じる。
精一杯離れてはいるのだが、すぐ隣に人が座ったのでそちらにもあまりよれずに結果すぐに手が当たりそうな位置に柏木がいることになった。
「そ、そういえばどんな映画を見るんだった? 俺はあまり詳しくないんだけど」
「そ、そうですね……。今日見るのは純愛映画なんですよ。その……やっぱり恋人同士ですから……」
柏木が恥ずかしそうな顔を見せてくる。
それにつられて俺の顔を染め、視線を画面の方へと向ける。
するとちょうど映画が始まる。
◇
映画が終わる。
確かに内容は柏木が言っていたとおり二人の学生がゆっくり恋人になっていく話だった。その途中でさまざまな問題が二人を襲うが最終的に二人は恋仲となる……。
そんな話だった。
そして、柏木はそれを目を輝かせながらジッと見ていた。
目を見つめ合っている時は柏木も少し照れ、告白のタイミングでは息をぐっと飲み込む。
初めて手を繋ぐタイミングでは柏木も照れていた。
そして、最後のキスシーン。
柏木は恥ずかしさのあまり顔を震わせていたが、それでも目を離すことはなかった。
無意識なのか、気がついたら俺とも手を繋いでいる。
あまりに突然だったので、俺はびっくりして柏木の顔を見てしまう。
しかし、彼女は全く気付いた様子はなく、画面から目を離せない。
そして、映画が終わったあと、俺たちは近くのカフェに入っていた。
「さ、さっきはごめんなさい。き、気がついたら手を繋いでて……」
「いや、俺は気にしてないよ。それにしてもよほど好きなんだな」
「うん、好きだよ」
柏木が嬉しそうに答えてくれる。
ただ、それにしては――。
「実際にするのとは違う?」
恋人になってからかなり恥ずかしがっているところを見るとどうしても聞いてみたくなった。
「うん、どうしても自分がしているところを考えられなくて……」
「でも、ずいぶんと色々できたよな。あとは――」
画面の最後に映っていたキスシーンを思い出す。
そして、顔が赤くなる。
「そ、その……、まだそれは恥ずかしいよ……」
柏木も俺が何のことを言っているかわかったようで顔を赤くしていた。
ただ、すぐに言い直していた。
「そ、その……、み、三島くんとしたくないってわけじゃないよ……。そ、その……、は、恥ずかしくて……」
「あぁ、わかってるよ。俺たちの速度でいけばいいよ……」
俺が微笑みかけると柏木は申し訳なさそうに頷く。
「そう……だね。で、でも、進展してるのかな?」
「もちろんだ。今までだとこうやって映画に来ることもできなかったからな。それよりもこの後はどうしようか?」
「どこか行きたいところはある?」
「そうだな……」
カフェから周りを見る。
そこで目にとまったのはゲームセンターだった。
まぁ定番のデートスポットではあるよな。
「ゲーセンはどうだ?」
「えっと、私あまり行ったことなくて……」
申し訳なさそうにする柏木。
「それならせっかく出し一緒に行ってみるか」
「うん……」
不安そうな表情を見せる柏木。
カフェを出た後、俺の手をしっかり握りながら一緒にゲームセンターへと向かっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます