第22話
翌日、いつものように俺は結衣を迎えに行っていた。
呼び鈴を鳴らすと中から真奈が現れる。
「あっ、お兄ちゃん。おはよう」
真奈が顔を覗かせると嬉しそうに挨拶をしてくる。
「あぁ、おはよう。それで結衣は?」
「お姉ちゃんなら今準備しているよ。すこしだけ待っててね」
「わかったよ」
それからしばらくして結衣が出てくる。
「ごめんね、待たせてしまって」
「いや、真奈が話し相手になってくれたから大丈夫だったぞ」
「真奈も学校に行かないとダメでしょ? 準備しなくて良いの?」
「あっ、そうだった。それじゃあお兄ちゃん、また今度ね」
真奈が慌てて部屋へと入っていく。
それを見送った後、結衣が手を差しだしてくる。
その手を取ると俺たちは学校に向かって歩き出していく。
◇
「毎日ごめんね。大変になったら言ってね」
「いや、一緒に行けるならこのくらい大丈夫だ。それに――」
しっかり繋がれた手。
それを見ているだけで俺は頬が緩んでしまう。
だいぶ結衣も慣れてきたようだ。
だからこそこうして登校中、周りに人がいても手を繋いだままでいることができた。
これも一緒に映画に行ったら結衣の部屋に行ったからだろうか?
とにかくこれなら安心して恋人同士だと言える気がした。
そして、いつものように歩いていると結衣の後ろから佐倉が抱きついてくる。
「結衣ちゃん、おはよう!」
「あっ、有紗ちゃん、おはよう」
突然抱きつかれて慌てた結衣は一瞬驚いたもののすぐに結衣の方を振り向いて安心していた。
「三島もおはよう。……へー、すこしは進捗したんだね」
俺たちの手がしっかりと繋がれていることを見て佐倉は口をニヤけながら微笑む。
「あっ……」
それを見て結衣が慌てて手を離そうとする。
しかし、それを佐倉が手で止めてくる。
「今更でしょ? 無理に離す必要はないわよ」
「えっと、でも……」
ようやく恥ずかしく思ったようで顔が真っ赤に染まっていく。
「三島はどうしたいの?」
「俺はこのままの方が嬉しいけど、結衣が嫌がるなら無理をすることはないからな」
「うん、卓人くんがそうしたいなら頑張るよ」
結衣がにっこりと微笑んでくれる。
それを見て俺は少し嬉しく思えた。
「それにしても卓人くんと結衣……か。うんうん、この休みの間に本当に進展しちゃって……。もう私の出番はないかな?」
「そ、そんなことないよ。有紗ちゃんがいないと私はダメだよ」
「もう、結衣ちゃんは嬉しいことを言ってくれちゃって……」
佐倉が後ろから結衣を抱きしめる。
その際に俺たちの手が離れ、結衣はバタバタと逃れようとしている。
「もう、有紗ちゃん。止めてよー!」
「あははっ、結衣ちゃんは相変わらず軽いねー」
しばらく二人でじゃれ合っていた後、ようやく逃れることができた結衣。
すこし息を荒くしながら俺の方に近付いてくる。
顔色もすこし赤くなっている今の結衣だと何だか犯罪の匂いがする気がしたが……。
「あっ、そうだ。有紗ちゃん、そろそろテスト前だけど勉強は一緒にするんだよね?」
「そうだね、もうそんな季節なんだ……」
「うん、そうだよ。だからまた一緒に勉強するかなって」
「もちろんだよ。……なるほど、つまり三島も一緒に勉強して良いかってことだね。もちろん大丈夫だよ。でも、それなら結衣ちゃんの部屋だと都合が悪いのかな?」
「へっ? 私は大丈夫だよ?」
不思議そうに首を傾げる結衣を見て佐倉は不思議そうにする。
「あれっ? 結衣ちゃんなら三島を家に入れるのは恥ずかしがるかなって……。えっ、も、もしかして、二人って?」
「そういうことか。それなら昨日結衣の家に行ってきたぞ」
「うん、だから問題ないよ……」
「そっか……、うん、それならもう遠慮することはないね。でも、とりあえず今日はお赤飯を炊いていくね」
「……? うん、ありがとう」
訳もわからずに頷く結衣。
一方の佐倉は嬉しそうな表情を浮かべていた。
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