第10話
(柏木)
三島くん、風邪をひいたって聞いたけど、大丈夫なのかな?
朝、突然相場に声をかけられたときは驚いてしまったが、理由がわかり安心した。
それと同時にまだ三島くんの連絡先を聞いていなかったことに気づく。
ど、どうして聞いておかなかったんだろう……。
学校に行ったあとも不安に思いながら一日を過ごしていた。
すると、そんな私を見かねて有紗ちゃんが声をかけてくる。
「もう、結衣ちゃんは……。そんなに気になるならお見舞い、行ってくれば良いんじゃないかな?」
「で、でも、突然行ったら迷惑じゃないかな?」
「そんなことないわよ。むしろ三島は喜んでくれるんじゃないかな?」
「そ、そうかな……」
少し不安に思いながらも三島くんに喜んでもらえるならと行ってみることにする。
「ありがとう、有紗ちゃん」
「気にしなくて良いわよ。落ち込んでる結衣ちゃんは見ていられないだけだから」
「うんっ」
ようやく笑顔を見せることができた。
それからは授業が早く終わって欲しいとずっと待っていた。
◇
ようやく授業が終わったので、大急ぎで支度をして帰っていく。
「結衣ちゃん、また明日ね」
「うん、また明日」
有紗ちゃんに手を振ると小走りで教室を出ていく。
するとそんな様子を見ながら有紗ちゃんはニヤついていたが、今の私にはそれを気にしてる余裕はなかった。
何かお見舞いの品もいるよね……。
一度家に帰った後、財布の中を確認する。
「あまり高いものじゃなかったら買えるかな……」
あとは服装だけど……。お見舞いなら今のままの方がいいかな。
制服姿の自分の格好を見て少し迷ったもののとりあえずその格好で行くことにする。
「それじゃあまずは果物かな」
お見舞いといえばやっぱり果物かな。
「あれっ、お姉ちゃん、どこか行くの?」
家を出ようとすると妹の
「うん、少し出かけてくるよ」
「あっ、わかった。あの彼氏さんのところへ行くんだね。じゃあごゆっくりー」
にやけながら見送ってくれる。
「もう、そんなんじゃないよ……」
口を尖らせながらも時間がないのでとりあえず家を出ていく。
◇
無事に果物を買った後になんとか三島くんの家の前まで来た……んだけど。
「ど、どうしよう……。心配のあまり無我夢中で来ちゃったけど、家には三島くん以外もいるんだよね……」
家の前までやってくると顔を真っ赤にして固まってしまう。
で、でも、ここまで来たんだから三島くんにはお見舞いを渡していきたいもんね……。
ゆっくり震える手つきでインターホンを押そうとする。
しかし、指がかかる前に離してしまう。
「うぅ……、ど、どうしよう……」
緊張のあまりどうすることもできない。
こんな時、有紗ちゃんがいてくれたら代わりに押してくれるんだろうな……。
もし、隣に三島くんがいたら、私に勇気が出るように色々手助けしてくれるんだろうな……。
三島くんのことを考えると自然と笑みがこぼれ、やる気が出てくる。
そうだよね。三島くんがしんどい思いをしてるんだから私が頑張らないと!
グッと手を握りしめて、気合いを入れながらインターホンを押そうとする。
するとその瞬間に玄関の扉が開く。
「あれっ、お客さん?」
出てきたのは可愛らしい少女だった。
三島くんの妹さんかな?
「え、えっと、私はその、三島くんの……、あの……お、お見舞いを……」
「うん、わかったよ。それじゃあ中に入ってくれますか?」
緊張のあまり上手く喋れなかったものの、妹さんはそれだけで理解してくれて家の中へ入れてくれた。
「それにしてもお兄ちゃんも隅に置けないね。こんなに可愛い彼女がいたなんて。どうりで最近生き生きとしてたわけだね」
「そ、そんな……、か、可愛いだなんて……」
「十分可愛いですよ。あっ、私お兄ちゃんの妹の美咲って言います」
「あっ、私は柏木結衣です」
「結衣さん……ですね。それじゃあ付いてきてください」
そのまま美咲は二階へと上がっていく。
そして、その中の一つの部屋をノックする。
「お兄ちゃん、今大丈夫?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます