概要
滑落の果てに出会ったのは、声を持たない人々の集落だった。
足元から崩れた土と共に、わたしは斜面を滑り落ちた。
目を覚ましたところは名も知らぬ集落。世話をしてくれた娘に声を掛ければひどく怯えられ、悪夢に叫べば住人が様子をうかがいに来る。声のかわりに指で言葉をあらわすかれらの中で、わたしはひどく異質だった。
目を覚ましたところは名も知らぬ集落。世話をしてくれた娘に声を掛ければひどく怯えられ、悪夢に叫べば住人が様子をうかがいに来る。声のかわりに指で言葉をあらわすかれらの中で、わたしはひどく異質だった。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!一編み一編みに込められた、あたたかに紡がれる言の葉
この作品を読んで最初に浮かんだイメージは、クリーム色の毛糸のセーターでした。あたたかくて、優しくて、その一編み、一編みにつくった人の気持ちが込められている。
一つひとつの言葉を丁寧に選んで、文章にして、やわらかい仕草をえがく硬い指先、糸や植物に色や質感、匂いを与えてくれるような繊細な筆致から、作者様が言葉を愛して、大切にされていることが伝わってきます。
そして、突然の別れや崩壊で、言葉が儚いものだということも教えてくれます。最後は切ないけれど日溜まりのようなあたたかさを感じさせてくれる、そんな作品でした。
この作品の静謐であたたかで、儚い世界に多くの人が包まれてほしいと、心から願います。