かれらは声をもたない
夏野けい/笹原千波
序
足下の抵抗が失われる。優しく脚を引かれるような感覚は腹部まですぐに伝わり、臓物が浮き上がる不快さに襲われる。わずかな時間に違いない滑落。けれどその一瞬ごとは引きのばされて永遠のような錯覚に陥る。尾根には仲間たちの影があった。逆光で表情までは伺えない。土砂が巻き上がる。もうさっきまでいた山道は見えなくなった。目をつむる。まだ落下は止まらない。
固まっていた喉が唐突にほどける。叫んだ。張り裂けそうなほどの大声を出した。それで救われるわけもないのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます