第24話 女なんか嫌いだよ②
明梨の噂の件、今の段階で実里の言い分を完全に信じられるかと言えば無理だ。ただ、一定の悪意が、そこに働いていると言うことだけは真実だろう。だって、その金持ちを、蒼馬も創太もよく知っているし、知りすぎているから。
「まぁ全部を信じて、何て言わない。でも、明梨が悪い人間ではないってことだけは信じてほしい。」
友達のためにここまで真剣になれる高校生が一体どれだけいるだろう?小早川は、いい友達を持っている。そう思った。
「あぁ、確かに、俺も認識を改めるべきだと思ったよ。」
「そう!?よかったぁ。」
「じゃあ、これで───。」
ガシッ
自分の目的を達成したので、足早に帰ろうとしたのだが、どうやら失敗したようだ。
「ちょっとぉ~、まだ、私の質問が残ってる。」
「デスヨネー」
創太はコーヒーを買ってくると言って席を外し、秋山実里が自分に聞こうとしていることを予想してみた。・・・のだが、
「わかんねぇ。」
いくつかは思い浮かんだのだ、
蒼馬はプライベートはどうなのか?とか
学校の成績とか、趣味とか、好きな食べ物とか、でも、どれも態々俺に聞く意味がわからなかった。
「はぁ。」
諦めてコーヒー片手に戻る。
「じゃあ答えてもらいましょうか。」
「内容次第だな。」
「無理矢理私を連れ込んで、アレコレやったんだから答えてよ。」
「おいっ!言い方!」
わざと少し大きな声で言ったせいで、周りから注目を集めてしまった。
「・・・まぁ、大体のことは答えるさ。」
「それじゃあ、これって蒼馬くんだよね?」
そう言って差し出されたスマホを見ると、ある記事が写っていた。真ん中にはとある
ピッチャーが写っている。
「っ!?」
「やっぱり、蒼馬くんなんだ。」
そう、そこに写っているのは蒼馬だ。もっというなら中学生時代の蒼馬。
「あ、あぁ。そうだよ。」
「ねぇ、どうして野球やめちゃったの?」
実里の綺麗な顔が覗き込んでくる。
「・・・春の大会で、あいつ怪我したんだよ。さっきも言ってたの聞いたろ?そこの記事にも書いてある通りだよ。」
「本当に?」
「あぁ。」
「違う、それが全部じゃないでしょ?」
実里がどこまで検討をつけているのかわからないけれど、
「全部だよ。怪我して復帰できなかった。それだけ。」
「私には喋らせたくせに、創太は話してくれないんだ。」
「いや、話したろ、その記事が全部だよ。」
「・・・そっか、ありがと。」
もう話すことはない。そう言わんばかりに実里はあっさりと去っていった。
「ウソつき」
去り際の彼女の言葉は、聞かなかったことにしよう。
「で?なんで今日は女と2人でつけてきたの?」
夜、蒼馬からの電話に出たらこれである。
「いやー、蒼馬さんがデートするって言うから気になっちゃって~。」
「それで秋山とか言う女子も誘ったわけ?」
真面目に怒ってらっしゃる・・・
「いや、彼女は彼女で小早川さんを追ってたみたいだぞ。それで一緒につけてた。」
「・・・そっか。」
思いの外、怒っていないようだ。
「楽しかったか?」
純粋な感想が気になった。
「まぁ、つまらなくはなかった。」
「そっか。そりゃあよかった。」
思ったよりも好評価だったようだ。
「お前のこと、秋山さんに聞かれた。彼女はお前のこと知ってたぞ。」
「・・・何て言ったんだ?」
「怪我したって、それだけだって言った。」
「そっか。」
「なぁ、そろそろいいんじゃないか?小早川さんは悪くないと思うけど。」
「創太」
「?」
「俺は、ああいった女は大嫌いだよ。」
ツー、ツー
「切られた。」
創太は知っている。蒼馬は怖いのだと、もう一度起きるかもしれないから。
「なら、あの楽しそうな顔はなんなんだよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます