お前みたいな奴、大嫌いだ。でもお前は

MASAMUNE

第1話 次のターゲットは屋上で

「どうして男って、エロいことしか頭にないんだろうねー。」

「今度の彼氏は何日続いたの?」

「うーん、5日くらいかなぁ。すぐにヤれるとか思ってるやつばっかり!マジ最悪!私はそんなに安くないっての!」

県立白桜高校の屋上には春の爽やかな風が吹いている。そんな爽やかな場所には似合わないドロドロの別れ話をしている明るくロングの茶髪の女子生徒の名前は小早川 明梨。隣には彼女の中学時代からの親友の秋山 実里がフェンスに背中を預けるようにして座っている。2人とも顔立ちが整っているし、ギャルらしいメイクもよく似合っている。しかし小早川 明梨の容姿は格別で、何とか坂とかいうアイドルも顔負けの可愛さと美しさを持っている。

「これで高校入学から1年で何人と付き合って別れたのよー?」

「そんなの数えてないよ。」

「8人だよ。」

実里は内ポケットから生徒手帳とペンを取り出して何かを書き込んでいる。

「見る?あんたの元カレリスト」

そう言って見せてきた手帳には高校入学から今日までに明梨が付き合った人の名前や学年クラスが綺麗な文字で書き込まれていた。

「うッ」

見ただけで過去を思いだして気分が非常に悪くなる。

「でもさぁ、何で【処女は本当に好きになった人にあげるの!】なんて言ってんのに適当な男とばっかり付き合ってんのよ?」

「だってー、ちょっと良いかな?とか思ったりするんだけど、ことごとく付き合うとすぐに襲おうとするクズばっかりなんだもん!」

「大体わかるだろー」

実里は親友の愚かさに苦笑する。何人も付き合ったり、容姿の良さから女子に嫌われたり、色々と悪い噂ばかり流れている明梨だが、本当は誰よりも乙女で、ただ男を見る目がないだけなのだ。

「じゃあさ、1組の惣代風 蒼馬なんてどうよ!?」

「惣代風って確か実里のクラスの主席の人だよね?」

「そうそう!」

「でもなぁ、あんまりタイプじゃないんだよね。」

「ふふーん、そんなこと言っちゃうんだー」

実里の意味深な表情に首を傾げると、自慢げに実里が、先週の話なんだけどね!と話始める。

「私が学校に忘れ物取りに行ったときにね、惣代風くんが居残りで勉強してたんだけど、そのときメガネ外しててさ!前髪とか邪魔だったし、私を見つけてすぐにメガネかけちゃったから、よく見えなかったけど、あれはきっと格好いい部類に入る男だよ!」

「ふーん、いいの?そんな男を私に譲って」

考えてみれば明梨は実里に彼氏がいたという話を聞いたことがない。

「いいの!いいの!私はあんたの恋話しか興味ないから!」

「どうだかー?」

親友の笑顔の裏を探ろうとして、そんな自分を注意する。実里がそう言うなら

「じゃあ、ちょっと考えてみるよ。」

今まで考えたこともないタイプだな。少し楽しみかも。



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