第5話 君は誰?
「ねぇ、その小説って面白いの?」
あまりにも突然だったから、まさか自分に対する言葉だとは思いもしなかった。一応気になったので横目に見てみると、すぐ側に同じ学校の制服を着た女子生徒が立っていた。周りには誰もいないから、話しかけた相手は俺なのだろうか。
「惣代風 蒼馬くん、だよね?」
「うん、そうだよ。」
その女の子は、こんな場所には珍しいギャルだし、でも、かなり可愛い。
だからこそ、おかしい。俺はこんな子と関わったことはないはずだ。これでも同じクラスや委員会など、何かしら関わった人の事は覚えているタイプの俺が覚えてないのだから、本当に無関係なはず。
「その本、面白いの?」
単純に本が気になっただけなのだろうか?とりあえず、そう言うことにしておこう。
「あぁ、面白いよ。単純なラブコメだけど、単純だからこその面白さがある。」
話ながら感じるが、多分この子の興味は本ではない。そう感じる。どうしても、この疑問に納得のいく説明がつかない。
「ところで、君って白桜高校の生徒だよね?」
制服が同じなのだから、多分あってる。
「あ、あれー?私のこと知らないか。」
その女の子は少し肩を落とす。接点がないのだから、知るはずがないではないか。
「私は小早川 明梨。あなたと同じ白桜高校の2年生です。よろしくね!」
小早川という女の子は笑顔でそう言った。
「よ、よろしく。」
見た瞬間から思っていたが、この子の容姿はかなり可愛い、というか綺麗だ。油断すると見惚れてしまいそうになる。
「でも、どうしてこんなところに?アニメとか好きなの?」
そう、別に名前とかはどうでもいい。俺が一番気になっているのは、彼女が何故ここにいて、そして、どうして俺に声をかけてきたのかだ。
「えっ、あー、えっーと・・・」
目が泳いでいる、恐ろしくわかりやすい。でも、これではっきりした。彼女はアニメとかが目的なのではなく、俺を探していたのだろう。こいつが創太と直接の関係があるのかわからないが、とにかく、こいつは俺にとって好ましくない存在だな。
「この本に興味あるんだよね!?」
「へっ?あー、うん。」
「いやー目の付け所がいいね!この本はね!─────────クドクド──────。」
ここで俺は知略の限りを尽くして判断した。”嫌われる方法”を。
(この手の陽キャ系の人間はこうして、1人で話が盛り上がってしまうような人間を好まない傾向がある。冷たくする方が悪手だからなこういうのは。)
「クドクド────って感じなんだ!!」
「へ、へぇ。そうなんだ。」
よし、完全に引いている。俺の作戦勝ちである。これで、この女は俺への興味を失っただろう。そう勝ち誇っていたとき、
「じゃあ、この本買ってみようかな。」
「・・・え?」
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