第3話 初対面?
1週間のうちの5日間を占める学校生活において蒼馬はほとんど変わらない。変わるのは時間割くらいのもので、登校時間も下校時間も休み時間の過ごし方も基本的に同じである。
なのだが、今日は好きなライトノベルの新刊の発売日なのだ。普段は放課後居残りで勉強するのだが、今日はホームルームが終わり次第アニメイトに直行するつもりだ。
「じゃあ、明日も遅刻しないように」
担任教師の誰一人としてまともに聞いていない注意を聞き流して今時、野球部すら使わなくなってきたエナメルバックを肩にかけて教室を出る。出る直前に秋山とかいう女子が俺を見ていたのは、気にしなくてもいいだろう。
「おー蒼馬、今日は帰るのか?珍しいな」
「まぁな。」
適当に話を済ませて先を急ぐ。混雑している下駄箱を人と人との間を縫うようにくぐり抜けて靴を履き替えて駐輪場へ、蒼馬自身のスポーツタイプの自転車に股がって、いつもとは正門を出ていつもとは反対方向に曲がる。
アニメイトのある横浜までは自転車で約1時間ほど、少し遠い道のりだが、そこから家までは比較的近いので帰る分には問題ない。
「にしたって、遠いよ」
どうしても、小1時間という時間は長い。唯一の救いは、まだ初春で風が涼しいことくらい。
「ァぢー!」
いくら初春と言っても1時間も自転車に乗れば暑苦しくなる。ビブルに着いた蒼馬のYシャツは汗が滲んでいた。
しかし、ビブルの中は比較的涼しい温度設定がされていて、体の熱を冷ましてくれる。若い世代が多く訪れるビブルの中は制服を着ている下校中の生徒も少なくないため、制服の蒼馬が浮くようなことがないのが、ありがたい。もう何回も来ているので、慣れた足取りで8階に向かうと目的のアニメイトに到着する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます