第7話 俺の平穏・・・

1週間のうちの5日間を占める学校生活において蒼馬はほとんど変わらない。変わるのは時間割くらいのもので、登校時間も下校時間も休み時間の過ごし方も基本的に同じである。なのだが、

「いやー、本当に面白かったよこれー!」

現在、俺のお気に入りの窓際最後尾の席にいる俺と向かい合うように前の席に座っている女子生徒がいる。しかし、流石は女子。創太のように席に股がるのではなく、席の向きを変えて、ちゃんと座っている。彼女の名は

小早川 明梨。つい先日、アニメイトで出会い、俺の持っていたラノベに興味を持ったらしく、1巻を限定版で購入していた。

(限定版を買うつもりではなかったらしいが)

そして昨日の今日で、買ったラノベを片手に放課後、俺のところに来たわけだ。

(あと30秒あれば、先に帰れたのだが。)

教室に彼女が現れた時点で、クラス中の注目を集めていた彼女が、よりによって俺のところに来たものだから、今の俺はクラス中からの奇異の目線が突き刺さっていた。

しかも、「おい、今度は蒼馬かよ」

「うそ、でも、蒼馬くんは平気だよ」

「いやいや、あの小早川だぞ」

「・・・」

と言った陰口まで聞こえる始末。

(陰口はちゃんと隠れて言いましょう。あと小早川さんに何があるのか是非俺に教えて!)

でも、そんな状態のクラスを一切気にすることなく彼女は俺に向かっている。

「もうこの主人公なんてさ!女心が解らなさすぎなのよ!」

しかも、昨日の俺以上の熱弁。こりゃあ昨日は相当読み込んだな。

「でも、最後のこの告白は感動したなぁ。もうこのまま幸せに過ごしてほしいよぉー!」

「ふっ、そうだな。」

「だよね!蒼馬くんもそう思うでしょー!」

(あぁ、こいつ、乙女だな。)

俺の中で少しだけ小早川の印象が変わった。

「あの2人、何の話してんだ?」

「小早川さんの持ってるの、よく蒼馬くんが読んでるような本だよね。」

「そこまでして・・・蒼馬、騙されるな」

「あの蒼馬が」

「私の蒼馬くんがー!」

何だか陰口(陰じゃない)が盛り上がっているのだが、ちょくちょく俺の気になる話が出てきているな。てか、俺は君のものではないぞ。なるほど、創太を苦しめていたのは君か。ワシの創太を苦しめよって。

「ねぇ、聞いてるー?」

「え、あぁごめん、それで、これからなんだって?」

「遊ぼう!」

「・・・は?」







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