第14話

 カテーテル検査は問題なく終わり、最後に切開した右手首の止血処理をするのだが、動脈なので簡単に止血出来るわけではない。

医師が力いっぱい手首を押さえ、角材のような分厚いパッドが付いた大きい絆創膏を貼り付けて、その上からきつくガーゼを巻き付ける。

思い切りパッド部が手首に押し付けられて、これがなかなか痛い。

 止血処理が終わると病室のベッドがやってきて、再度板に乗せられて移動し、カテーテル室の入口まで来た道と逆に進む。

入口付近でHCU担当の看護師が迎えに来ていて、元の部屋まで押し戻された。

 このパッド付絆創膏を付けたまま、二時間安静にするように言われた。

私は両親に頼んで、自室にあるいくつかの小説を退屈しのぎに持ってきてもらっていたのだが、右手首が動かせないので本も読めない。

折角退屈しのぎの本があっても、また何も出来なくて天井を見詰めるしかない。

 そのうち、きつく押し付けられた右手首は徐々に痛みが増してくる。

右手を見ると血の巡りが悪くなって手が白っぽくなってきている。しかし外すわけにいかないので我慢するしかない。

正直カテーテルで一番辛いのが、この止血処理だった。

 ようやく二時間経つと看護師が現れてガーゼを外し、絆創膏を剥がそうとした。

ところが、絆創膏を半分ほど剥がした途端に右手首からまるで噴水のように血が噴き出した。私は体質的に血が止まりにくいようで、止血の目安になっている二時間では全く止まって無かったのだ。

私は自殺を企図して手首を切った事はないのだが、凄い勢いで噴き出す血を見て、手首を切るとこういう事になるんだ、と妙に冷静に観察してしまった。

 噴き出した血で私の腕もベッドも赤く染まってしまう。看護師は「大変大変」と慌てて私の右手首の絆創膏を力いっぱい抑え、私が左手でナースコールのボタンを押して大至急救援を呼んだ。

 すぐに四人ほど看護師が現れて、一人は医師を呼びに行き、残りは手を押さえている看護師の支援や床に飛んだ血を拭いたりしていた。

医学の素人の私は知らなかったのだが、止血処理は医師ではないとだめなようで、しばらくしてそれまで見た事のない背の高い男性医師がやってきて止血処理を行った。

そして二時間の延長。やっとこの痛いパッド付絆創膏から解放されると思ったのに、また最初からやり直しだ。

 そのうち食事になったのだが、右手が使えない事に気を利かせてくれて箸ではなくスプーンが付いていた。それでも利き手ではない方で食べるのはなかなか難しい。

 そしてまた二時間が過ぎ、今度は看護師も慎重に絆創膏を外してみたが、出血は僅かになっていた。ようやく次の段階の普通の大き目の絆創膏に変わり、右手首の痛みから解放された頃にはもう一日が終わろうとしていた。

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