第16話
さて、ここまで拙作を読んで頂いた諸兄は何か引っかかる事があったと思う。
ベッドに寝たままで動けない私、一体トイレはどうやって?と思った方もいらっしゃると思う。特に小ではなく大の方だ。
これについては差し込み便器という物を使用する。小はまだ良いのだが、問題は大である。
私は入院以降ずっと大をしていなかった。入院時に差し込み便器という物を使うとは聞いていたのだが、得体の知れない物を使う事への抵抗があり大の方は我慢してしまっていたのだ。
しかしずっと我慢していて酷い便秘になってしまっても問題だ。私は意を決して大をしたいので差し込み便器を出してもらえるよう看護師に依頼した。
すると、看護師は「たらい」のような物を手にもってやってきて、私に手渡すと終わったら教えてくださいと言って病室を出て行った。
たらいを手に取った私はしばらくどうやって使用する物か考えてしまった。高齢ならば看護師が支援してくれるのだろうが、まだ若い私に支援するのは却って自尊心を傷つけてしまうとの配慮だろう。そういうプレイがお好きなら別かもしれないが。
しかしどう考えても寝たまま使用するには尻の下にたらいを入れて、そのままするしかない。果たして踏ん張れるのだろうか。
結果は無理だった。踏ん張る事がそもそも難しい。一体どんな姿勢で使えば良いのだろう。看護師に聞くことも出来ず、私はそのまま便器を返却した。
話は前後してしまうが、結局大が出来たのはカテーテル治療が終わった後のことで、看護師付き添いで車椅子移動という条件付きで普通のトイレの使用を許可された。実はトイレは私の病室から数メートルしか離れていない所にあったのだが、それでもわざわざ看護師を呼んで車椅子で移動しなくてはならない。
これはこれで看護師に負担をかけているような気がして気が引けるのだが、そのおかげで最初は便秘で苦労したものの、やっと大をする事が出来た。
話は変わって飲み物についてなのだが、私は見舞いに来る両親に病院内のコンビニで二リットルのペットボトルの麦茶を買ってもらい、病室の冷蔵庫に入れていた。
それを計量カップに入れて飲み、飲んだ量をノートに記入する。
前回水を買ってもらったら凄く不味いと書いたのだが、有名メーカー製の麦茶も妙な味がする。もしかして病気で味覚がおかしくなったのだろうかと思っていたのだが、しばらくしてこの計量カップ自体に妙な薬品ぽい臭いが付いている事に気付いた。不味いのは水では無くカップの方だったのだ。
しかし残念な事にカップは変えられない。水に比べれば味のある麦茶の方が多少マシに感じられるので、我慢して飲み続ける事にした。
買いたい物があったとしても自由に買う事が出来ない。歯痒い思いだった。
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