第15話

 夕食も終わると、主治医が現れカテーテル検査の結果について説明があった。その時になって私が聞いた「柔らかそうだし行けるだろう」の意味がようやく分かる。

 血栓は時間をかけて徐々に詰まって行き、最後に完全に詰まってしまうパターンと、突然大きな血栓が詰まるパターンの二種類があるらしい。

前者の場合は時間をかけて詰まるため、血栓が瘡蓋のように硬くなっている場合があり、そうした場合カテーテルで突き刺して開通させる事が難しいらしい。

後者の場合はカテーテルで突き刺して開通させた後、ステント留置を行うそうだ。

 つまり、私は後者の突然血栓が詰まったパターンで、カテーテルによって血栓を取り除くことが可能だと言う事だ。

誰でもそうだろうが、出来るだけ苦しみたくないし、早急に治療して欲しい私としては大歓迎だ。

 だが、すぐにカテーテル治療する事は出来ないらしい。カテーテル室は順番待ちがあるため、本番の治療は数日後になると言われた。この病院は心臓病で有名なため患者が殺到しているようで、当然カテーテル室も予約で一杯だ。

 母の知り合いの人は、心臓病でこの病院にかかる事を希望したらしいのだが、病床が一杯で入れないと言われ他の総合病院に入院したと聞いた。そのくらい人気なのだ。

そう言われたなら従うしかない。早く治してほしいが仕方のない事だ。

 しかし、その「数日間」が恐ろしく退屈な日々になる。

それまで朝から検査に連れ回されていた私だが、治療方針が決定すると検査が無くなった。つまり朝から晩まで寝ているだけである。

 沢山の本はあるのだが、ずっと本を読み続けると疲れてしまい、少し休憩しようと思うとウトウトしてしまう。

そのせいで今度は夜眠れない。一応寝ようとして電気は消してもらうのだが、何せHCUは騒々しいので余計に眠れないのだ。

ようやくウトウトしたかと思うと朝になり「採血です」という看護師の声で起こされ、ぼんやりとしたまま注射をされる。

 そんな日が数日続いた。数日もあれば残念ながら面白い本はとっくに読み終え、残るは買ったは良いものの、思ったより面白くなくて(全く私の小説のように!)数ページ読んで止めてしまう本ばかりが残る。

 テレビは相変わらず面白くない。見ていたのはニュースと旅番組だけだ。

旅番組を見ていると、私が監禁状態にあるので余計に旅をしたくて堪らない。

退院したら旅しまくってやる。そう強く思っていたのだが、そのせいで今現在の私は旅ばかりするようになってしまった。

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