第6話

 ベッドに寝たままの私は当然ほとんど天井しか見えていない。白い天井を眺めていると私を乗せたベッドはエレベーターに乗った。

先ほど一階に降りて来た際に使用したエレベーターとは違い、普通のシングルベッドサイズの可動式ベッドが入っても、左右に人が入れる余裕がある大きなエレベーターだ。

患者移送用のエレベーターなのでそうなっているのだろうか、エレベーターは衝撃も無く静かに上昇する。

 エレベーターが目的のフロアに到着し、降りるとすぐに停止した。少し首を傾けて周囲を見てみると、病院事務の人がいるガラス張りの小部屋があり、ベッドを押していた看護師が二言三言話している。

その小部屋の隣には「ICU」と大きく書かれた一方だけに開く大きな自動ドアがあった。

 ウィィン、という自動ドアが開く音がしたが、開いたのはICUのドアではなく、私の足元方向なので見えない所にあったドアだった。

またベッドごと移動し始めるが、やはり見えるのは天井だけで、今いるフロアがどのような場所なのか見当もつかない。

 しばらく進むとドアのような場所を抜けて個室に入った。十二畳ほどある、そこそこ大きな部屋で、そこでベッドはようやく停止する。

部屋の中にはすでに二人の女性看護師が待っていた。ベッドが停止するとここまで移動させてきた看護師と共に、私の体に張り巡らされたケーブル類を私の頭上にある機具に接続する。

ケーブル類を取り外したため一時的に止まっていた「ピッピッ」という信号音がまた鳴り出し、鼻のチューブから酸素が流れてきた。

 ここまで私を移動させてきた看護師はここで退出して行き、代わりに部屋で待っていた二人の看護師が私に話しかけてきた。

それぞれ名札を見せながら、担当します〇〇です、と自己紹介をする。

 まずは部屋の説明が始まった。私のいる部屋はHCU(High Care Unit)という部屋で、24時間体制の手厚い看護と監視が行われている。

部屋にはテレビと冷蔵庫を乗せた可動式のワゴンがあり、テレビは一番上で冷蔵庫が一番下、真ん中には引き出しがあり、引き出しの中には貴重品を入れておく鍵付きの箱がある。

テレビと冷蔵庫はプリペイドカード制。部屋には備え付けの流し台があり、その下部には引き出し式の便器が備わっていた。

 それから看護計画表なるものを渡され、今後の看護についての説明を受けた。

表には患者の段階別に自分が出来る事、出来ない事、看護師がやる事、やらない事が書かれている。

一番上はICUの患者で、私はその次の二番目のランクの患者と言われた。

 それを見ると制約は多い。まずベッドから降りる事は出来ない。なのでもちろん出歩くことも出来ない。用を足す事はベッドの上で専用便器を使う(部屋に備え付けの便器ではなく、ベッド上で用を足すための床上便器という物)、着替えや体を拭くのは看護師の支援の元で行う。

唯一食事だけはベッドの上ではあるものの、テーブルを置いて自力で食べて良い事になっていた。

そして飲み物は自分で用意するのだが、摂取量を記録するので計量カップを買ってきて欲しいと言われた。更にT字帯という、褌のような物も用意してくださいと言われる。

この病院は最上階にコンビニがあり、そこに行けば一通り売っているらしい。

私は早速立ち会った父に一通り買いに行ってもらえるようお願いした。

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