第2話 宝探し in 屋根裏部屋!

 少し、私の話をしよう。

 城山加奈しろやまかな、またの名を保坂雪奈ほさかゆきな。後者はネット世界でのハンドルネームだ。

 職業は女子大学生、趣味でweb小説なるものを書いている。

 自分の作品がアニメ化したことはなく、書籍化もないアマチュアにすぎないが。

 先ほどの「ししょー」というのは、ネットの知り合いの1人で、同じく小説書きである。

 色々あって、勝手にそう呼んでいるだけの間柄ではあるが、多方面でお世話になっているのであながち間違いでもないと思っている。

 ひらがな表記なのは、聞かないでほしい。

 ちなみにキャンプ歴は、小学3年生くらいまで。

 おかげでテントやシュラフ、コンロといった基本的な装備には困らなかったし、良くも悪くも「やると決めたら一直線」な性格がソロキャンプ決行の決め手だった。

 ……かもしれない。




 ******




 翌日、アルバイトもなく家で春休みを全力で過ごしていた私は、早速家の屋根裏を漁り始めた。

 目的は、「家にあるキャンプグッズの確認」である。


「えーっと、どこかな……」


 炭火コンロやスーツケース、スキー板に至るまでが、ところ狭しと並んでいる。

 その下に埋もれるようにして、外置き用のボックスが3つあった。

 ここから先は宝探しゲームだ、と少しワクワクした。

 するとハシゴの下から、家事の洗濯干しを終えた父が顔を見せた。


「加奈、何してるんだ?」

「今度さ、キャンプ行ってみたいなって。テントとか、あったよね?」

「なら、昔使ってた山岳テントがあるぞ」

「どこ?」

「リュックあるかな? 多分その中にあるはず」


 リュックね、とヒントを把握。

 まずは1つ目の宝箱から。

 中身は……空だった。

 ちぇっ。スカですか。

 気を取り直して次の箱。

 中にはキャンプ用のシュラフが詰まっていた。


「これ、使えるよね?」

「ああ、黒いやつは封筒型で、そっちの赤いやつはマミー型だな」


 去年見た女子高生キャンプアニメのおかげで、そっちの知識は問題ない。


「その中に、オレンジの袋ないか?」

「あるけど、これ海月みづきのシュラフだね」


 妹のシュラフに用はないと、そのままボックスへ戻す。

 目的を外れたが、寝袋は確保できた。




 ******




 最後の箱には、テニスやバドミントンのラケットが入っていた。

 昔キャンプに行っていたときの遊び道具である。

 その下に、ホコリをたっぷりと浴びたような古いリュックがあった。


「これかな?」


 下にいる父へ向けて、荷物を下ろす。


「ああ、これだよこれ。ほら」


 取り出したのは、確かにオレンジ色の袋が。それも2つ。

 大きい方がテント本体、小さいのは間違いなくポールの袋だ。


「加奈、外で1回テント立ててみようか」

「うん」


 そのまま上着を羽織って外へ。

 サイズが小さいので、車庫を使わずとも十分だった。


「よし、じゃあまずはテントを出そうか」


 迷わず四隅の穴を探しだし、丸められた布を広げる。


「次は、ポールだな。繋げるときはどこからでも良いが、たたむときはゴムのテンションが均等になるように、真ん中からやるんだぞ。こうやってな」


 まずは父の実演である。

 一通り見せられたら、次は私の番。


「よし、ポールをテントのてっぺんで交差するように穴に差し込むんだ」

「これ大丈夫? 折れ曲がったりしない?」

「元々強い素材で出来てるから、問題ない。それと、1ヶ所入れた反対側は、テントが『逃げない』ように、生地をしっかり持つんだぞ。引きずらないようにな」


 恐る恐る、ポールを曲げてみる。

 確かに、しっかりとしなって折れる気配が全くない。

 少し感動した。


「屋根の部分に、フックがあるだろう? それでポールを引っかけていくんだ。てっぺんのやつは2つとも上側のポールで良い」


 これは簡単だったので、手際よくできた。

 だんだんとテントが立ち上がっていく様子を見るのは、ちょっと楽しい。


「これで、一応は完成だな。テント本体さえ組み上がればこうやって移動させることも出来るぞ」


 ポールを持って、ひょいとテントを持ち上げた。


「あと、そこに青いシートがあるだろう。フライシートっていうんだが、コイツは屋根の上に被せるんだ」


 さっきまで脇によけていたシートが、ここで出番となった。


「ロープがついているだろう、それに加えてコイツの四隅もペグダウンすれば完璧だ」


 その後は、入り口の開け方やら諸々の注意点を教えてくれた。


「じゃあ、片付けはやってみろ」

「はーい」


 ソロキャンプに行くのだ、それがある意味本題である。




 ******




 テントを解体し、全て袋に仕舞うまで、およそ15分。

 その間に父は中へ戻り、昼食の仕度をしていた。


「どうだ、片付けは出来たかー?」

「うん、こんな感じ」


 リビングの入り口で、キッチンに向かって袋を掲げる。


「おお、いいじゃないか。良く出来たな」

「午後は、他の道具色々探したいんだけど」

「いいぞ。大体は屋根裏にあるだろうし、まあいいんじゃないか。午後はちょっと出かけるから、ちゃんと片付けもしておけよ」

「はーい」


 めんどくさいから、車にでも突っ込んでおきますか。

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