第10話-2 おさんぽ後半戦

(ふぅ……なんとかドボンはしないで済んだわ……けどこれ帰りもあるんだよね……)


 3分後。

 なんとか川越えに成功した私は、水が滑り落ちる岩肌を横目に見ながらクライミングをしていた。

 今度のロープが固定されているのは、地面ではなく木の根っこと、若干の不安はあったものの登頂に成功。

 ここから先に道はなく、ただ渓流が続いていた。

 落ちたら色々な意味で(主に着替え的な意味だが)あとはないと覚悟を決め、石の上を進んでいく。

 上流へ行くにつれて、石は岩になり、その岩は私の身長を超えるまでの大きさになっていった。

 20分ほど歩き続けたころに、ようやくゴールらしきものが見えた気がした。


(あ、滝の音っぽいのが聞こえる……)


 無音の空間にこだまする、水の音。

 しかし目の前には、身長の倍くらいはありそうな大岩が鎮座していた。

 とうとう沢登りが岩登りである。

 今度は、命綱も何もない文字通りの「命がけ」。

 割と比較にならない緊張感の中、最後の関門を乗り越える。

 大岩を越えて目にしたのは、十数mにも及ぶであろう立派な滝だった。

 可能な範囲で近づき、水しぶきを浴びてみる。


(ああ、気持ちいい……良いねこれ……)


 写真を撮り、またDMで送りつける。


『ようやくゴールです! まだ帰り道がありますが(笑)』

『おお、滝っぽいじゃん。いい感じですね。そうだ、せっかくだから滝行してこい(*‘∀‘ *)』

『なんでですか!?』

『滝と言えば滝行だろう。俺が君くらいの年の時は、結構やったもんだぞ』


 嘘つけェ!!!

 誰がそんな与太話信じるかよォ!!!!


『そもそも着替えないですし、見ての通り水量もありません!』

『はいはいw』


 ちくしょう、何かムカつく。

 まあいいや、忘れよう。

 帰り道は、ここからだ。




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