第9話 本日のキャンプ飯は、強風の為、一部内容を変更して(以下略)
少々肌寒いような気がするが、意を決してクーラーボックスを車から降ろす。
下に入れていたガーリック味のブロックステーキと、焼きそばを取り出し、ツーバーナーのそばへ。
野菜は申し訳ないが、今回は使えそうにない。
一緒に入っていた調味料から、サラダ油の小瓶も一緒に。
買ったばかりのちいさなフライパンを火にかけ、少し温まったところで油をひく。
全体に馴染んできたのを確認し、まずは肉のパックを開く。
(ちゃんと焼けるかが不安と言えば不安ね……中心温度70℃で何分だっけ)
そんなことを考えなくてもしっかり焼けばいいだけの話なのだが、1人だとついそちらに頭がいってしまう。
とりあえず脳の片隅においやって、パックの中身をフライパンに放り込む。
屋外でタープを張ったにもかかわらず、風が吹き抜けてフライパンを冷やしてくれるせいか、なかなか焼ける気配がない。というか油がはじける音もしない。
火力を上げようにもしっかりと底に触れているので、意味がない。
ただ静かに「温められている」だけ、そんな状態。
時折出てくる肉汁の色と、焼き時間を見ながらじわじわと焼くしかなかった。
******
約5分後。
表面がほどよく焼けてきたので、焼きそばを投入。
トングを使い、ステーキのガーリックソースが絡むように炒めていく。
ニンニクの香りがタープ内に漂ってきた辺りで火を止め、皿に盛りつける。
見た目を気にしている暇はなかったので、かなりぐちゃぐちゃだが。
一口味見すると、少しもっちり感の強い麺にとけこんだソースの味が口の中に広がった。
「これなら、いいかな。ちょっと麺があれだけど食べられるね。……つか、寒い!! 無理!!」
料理をしている時だけ風が強まるおかげで、私の身体は初冬並みに冷えてしまっており、やむなくというか、我慢の限界とばかりに皿ごと車内へ避難した。
******
助手席の扉を開け、ダッシュボードの上に皿を乗せる。
シートを後ろに下げ、リクライニングも倒せばそこそこ快適な空間の出来上がりだ。
早速、手を合わせる。
「いただきます」
まずはステーキにかぶりつく。
味は当然スーパーのものなので非常に良いが、問題は焼け具合である。
断面を見ると、綺麗なピンク色に。
(これはある意味、奇跡的とも言えるわね)
別に私は料理下手でもなんでもなければ作るには作るしちゃんとできるが、場所が変わってしまうと不安になってしまい、自信をなくすタイプだ。
だからこそ、「料理が出来た」という成功に、少しだけ希望を持つことが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます