ひとり、ひとふり、ひとさわぎ

 この物語の面白さは、まず何より「わかりやすい」ことだと思う。
 文章もだけれど、「物語が難解でない」という点で。

 この話には、難しいことは、おそらく何処にも置かれていない。
 なのに、読む側に考えることをやめさせない、やめたくないと思わせる文体と展開。
 それぞれのエピソードに丁寧にまかれた謎の種の育つ様はとても骨太で、物語を色とりどりなパズルのような知的な構造に仕上げており、その妙味は全く失われない。
 簡単に言えば、「なんておもしろいおはなし!」という言葉に尽きる。

 などという面倒な御託はさておいて。
 女性が剣になる?
 大好きですね?
「おもいのつよさ」「遣い手と剣の繋がり」、そんな「互い」の心の在り方こそが真の強さになる?
 最高じゃないですか?

 それぞれのエピソードの感触は、どれもふわりと風のように軽くて、まるで主人公のありようそのもの。
 けれどその軽さが、物語を通して貫かれる「確固たる重み」あればこその軽さであることを、読み進めるうちに自然に感じ取れる。
 好みです。大変好みです。

 これを書いた現在、彼等の夢をかなえる旅はまだ終わりの気配はなさそうです。
 が、それはつまり、彼等の披露する「美し芸」を、特上の席で見る楽しみも、まだまだあるということでしょう。

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