概要
――その日、大正十一年三月十日、宮渕小夜子は消息を絶った。
その日まで、女学生だった。兄が彼女に与えたものは、機械仕掛けの棺だった。永遠に少女でいるための。
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- ★★★ Excellent!!!「花」にとって、枯れないことは、幸せなのか?
美しい花のような少女。
けれどその「花」を枯れさせることを恐れた兄は、少女に「花のままでいる」ことを望んだ。
そのとき、少女は花だった。花だから意思などない、花はそう思っていた。
だから眠り、いびつな氷中花になることを拒まなかった。
眠っていれば、花は枯れず、ただ夢見るだけでいられるから。
けれど花は、とおいとおい、いつかの先、全く不意に、唐突に息吹いた。
息吹いてしまった、もう一度。
今度は生きる「少女」として。
主人公の小夜子は、そんな「花」だった。
めざめたことで、「花」であることの意味を考え直さなければならなくなった。
この話は、そんな空虚な「花」が、小夜子と…続きを読む